いい家づくりコラム

設計イメージ

耐震等級3と構造計算のセットで安心の家づくりを

2021.7.21

地震大国である日本で安心して暮らすためには、耐震性の高い家づくりが欠かせません。その点、今や多くのハウスメーカーや工務店が「耐震等級2」や「耐震等級3」の住宅を建てていることは、安心できる要素の一つですね。しかし、設計時の計算方法の違いによって、「耐震等級3」への信頼度が大きく変わることをご存知ですか。

設計時に、「構造計算(許容応力度計算)」と呼ばれる計算方法を用いているなら安心です。しかしそれ以外の計算方法が用いられている場合は、もしかすると「耐震等級3」であっても安全性の裏付けが乏しいかもしれません。本当に地震に強い家づくりをするなら、「耐震等級」という言葉だけにとらわれず、耐震性がどのように検証されているかを確認することも大切です。

それはどうしてなのか、そして「構造計算」とは何か。このコラムで学んでみましょう。


「構造計算」ってなに?

一般的にはあまり耳なじみのない言葉ですが、耐震性の高い建物を建てるために欠かせないのが構造計算。これは、建物に荷重がかかることによって構造部分にどのくらいの負担がかかり、どのように変形するかを計算して数値化すること。建物にかかる荷重とは何かというと、屋根や壁、床など建物そのものの重さや、台風や積雪、地震などのことです。

家の設計を担うのは2種類の設計士

一般的に、家の間取りやデザインを考えるのは、「意匠設計」を担当する設計士です。一方、構造計算を担当する設計士は、ハウスメーカーや工務店ではなく専門の構造設計事務所にいる構造設計者が担当します。意匠設計を担当する設計士と、構造計算を担当する設計士の2者が相談しながら、梁の大きさや壁の位置など、デザインと強度のどちらも両立する構造に仕上げていくことが大切なのです。

構造計算が大切な理由

地震や台風などの自然災害に強い家づくりを行うには、構造計算で算出された結果に基づいて、柱や梁の大きさ、壁の配置、基礎の形状などを計画する必要があります。ただ丈夫に造ればいいというわけではありません。一つひとつの要素をいくら丈夫に作っても、バランスが悪ければ倒壊する恐れがあります。構造計算によって傾きやねじれのバランスを考えた設計をすることで、はじめて地震に強い家づくりができます。

構造計算は建物ごとに必要

構造計算は建てる家の条件に合わせて行います。建物の大きさや地盤は建てる家によって異なるため、構造計算は建物ごとに行います。


家の強度を測る計算には3種類あります

1.壁量計算

「壁量」「耐力壁の配置」「柱接合部の強度」を計算するもの。建築基準法では、木造2階建て以下の建物なら壁量計算のみで良いと定められており、多くの会社がこの計算を採用しています。ただ、この計算で分かるのは、地震や台風などの横からかかる力によって建物が倒れないかどうかということだけ。かなり簡易的な計算です。

2.性能評価による壁量計算

上記の壁量計算に加えて、「床・屋根倍率の確認」と「床倍率に応じた横架材接合部の倍率」の検証も行われます。長期優良住宅の「耐震等級3」は、たいていこの方法で計算され、導き出されています。

3.構造計算(許容応力度計算)

地震や台風などの横からかかる力に加えて、建物自体の重みや上下からかかる力に対してどれほどの強度が必要か、全ての柱や梁に対して検証し、壁量計算とは比較にならないほど細かな項目に対して数値を算出していきます。強度を測る上で最も緻密で安心な方法は、構造計算です。


日本の住宅の80%は構造計算をしていない!

耐震性の高い家を建てるには、構造計算が大切なことが分かりました。ところが、実は日本の木造住宅のうち、構造計算が行われている建物は2割くらいしかありません。

構造計算が行われない理由

日本の建物は「建築基準法」に基づいて建てられます。これに適していないと「違法建築」になります。建築基準法に適しているかどうかのチェックは、「建築確認」という書類を検査機関に申請することによって行われます。ところがこの「建築確認」では、構造部分の審査を義務づけているのは、「鉄骨造」「RC造」「木造3階建て」のみ。つまり、日本の家で最も一般的な2階建ての木造住宅では、構造部分の審査が必要ありません。法律で義務づけられていないので、構造計算をわざわざ行う住宅会社が少ないのです。

住宅会社の「四号特例」

木造2階建てに構造部分の審査が必要ないことは、建築基準法の「第6条の三」で定められています。そこには、「第四号に該当する建築物は、構造設計に関する部分で審査を必要としない」という内容が書かれています。
この第四号の建築物に該当するのが、2階建て以下の木造住宅。この特例は、「四号特例」と呼ばれています。この四号特例を根拠に、「この家の耐震性能はばっちりですよ」と言いながら建築基準法ギリギリの耐震性しか有しない住宅を建てる会社も残念ながら存在します。熊本地震で、現行の建築基準法に則った住宅が倒壊したことからも、建築基準法に適しているというだけでは安心できないことが分かります。

コストや部材の問題も

四号特例以外にも、構造計算が行われない理由があります。
例えばコストの問題。構造計算をするには専門の構造設計事務所に依頼しなければいけません。その分、手間も費用も増え、工期が延びて住宅の金額も高くなってしまいます。目に見えない部分でのコストはお客さんに理解されにくいため、商品が売れなくなってしまうという事情で住宅会社が行おうとしないのです。
また、建材として用いられる木材が計算に適していないという理由も。自然素材ゆえに、同じサイズでも強度が異なる場合が多いのが木材。部材の強度を数値で表すことができなければ、正確な構造計算はできません。この問題を解決するには、強度が表示されている「構造用集成材」や「構造用合板」、「接合金物」などを建築部材として使う必要があります。


構造計算と耐震等級3の両方そろって安心

「耐震等級3」とアピールされている建物も、裏付けとして壁量計算しかされていないなら、その安全性には疑問符がつきます。それは、長期優良住宅でも同じこと。長期優良住宅の認定基準には、「耐震性」も含まれていますが、その多くが「性能評価による壁量計算」によって検証されています。それでは、耐震性も科学的な根拠に乏しいと言わざるをえません。
しっかり構造計算を行い、耐震等級3を満たす設計を行う。両方がそろってはじめて安心といえます。
※長期優良住宅とは
長期間にわたって良好な状態で使用できるように、住宅の構造や設備に必要な措置が講じられている住宅のこと。


構造計算を行う住宅会社はある

壁量計算のみで強度を検証している住宅会社が多いのは事実です。一般的には、2階建て以下の木造住宅は構造計算されていない、と認識しましょう。
しかし、構造設計者と意匠設計士が連携し、デザイン性と安全性のどちらも高めようと努めている住宅会社も存在します。ホームページなどに記載されているので、チェックを。家づくりをするなら、積極的に構造計算を行っている住宅会社に依頼することをおすすめします。
フィックスホームでは、3クラスあるプランのうち上位の「プレミアム」と「ファースト」では全棟で構造計算を行い、耐震等級3を証明しています。耐震性の高い家づくりについて質問や不安がある方は、なんでもご相談ください。