床暖房と床下エアコン、どっちを選ぶのが正解?
2024.11.20
冬に床が冷たいと、余計に寒さを感じてしまいますよね。足元から暖かさを感じられる床暖房と床下エアコンは、冬に備えてぜひ導入していただきたい設備ですが、この2つは似ているようで全く異なる特徴をもっています。 今回は、床暖房と床下エアコンの仕組みの違いから、メリット、デメリット、光熱費などを詳しく解説します。床暖房と床下エアコンのどちらを選ぶか迷っている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
仕組みの違い
床暖房と床下エアコンはともに床を暖めるものですが、仕組みは異なります。
床暖房はフローリングの下に暖房パネルをひいて床を暖めます。輻射熱により床暖房を施した部屋は全体的に暖かくなりますが、廊下やトイレなどパネルをひいていない床は暖まりません。
床暖房の主な種類は、パネルの中の発熱線に電気を通す電気式と、パネルの中の不凍液を暖める温水式の2種類。電気式には蓄熱式と非蓄熱式、温水式にはガス式やヒートポンプ式、その両者のハイブリッド式があります。
一方、床下エアコンはその名の通り、1階の床にエアコンを設置するというもの。床下空間で暖気を循環させるため、1階の床全体を均一に暖めることができます。また、暖気は上昇するため、間取りによっては家全体を暖めることも可能です。
メリットとデメリット
足元から暖かさを感じられることが最大の特長である床暖房と床下エアコン。それぞれの主なメリット、デメリットをみてみましょう。
床暖房のメリット、デメリット
【メリット】
•輻射熱により部屋全体が暖まる
床暖房は輻射熱により、床だけでなく部屋全体を暖めることができます。これは発熱体である床暖房から発生する遠赤外線の効果で、遠赤外線は人の体の表面に吸収されやすいため、体の芯まで暖まるような感覚を得られます。
•温風による乾燥がない
空気の乾燥している冬場にエアコンからの温風が体に当たると、より乾燥を感じてしまいますよね。床暖房も部屋の温度が上がることで湿度の低下はありますが、風は発生しないため肌やのどの乾燥はエアコンより感じにくいでしょう。
•掃除が必要ない
エアコンは定期的にフィルター掃除をしないと運転効率に影響が出ますが、床暖房は掃除が必要ありません。
【デメリット】
•パネルをひいていない床は暖まらない
床暖房は床が暖かいだけでなく、輻射熱によってぽかぽかとした心地よい暖かさを部屋全体で感じられます。ただし、裸足で歩くと床暖房がある床とない床では明らかに床の温度に差があります。
•初期費用が高い
初期費用はメーカーや床暖房の種類によりさまざまですが、あるメーカーの床暖房は10畳で部材費が約50~90万円、それに熱源機の設置費用や工事費が上乗せされます。わずかなスペースに多額のコストがかかるのが難点です。
•故障時のコストが高い
電気式床暖房の場合、ヒーターパネルをフローリングの下にひいているだけなので故障することは稀で、給湯器などの熱源設備を使用しないためメンテナンスも必要ありません。対して温水式床暖房は、給湯器の耐用年数が15年、パネル内のパイプは30年といわれています。給湯器の交換は20~30万円、パネルの交換には100万円以上かかると考えておきましょう。
床下エアコンのメリット、デメリット
【メリット】
•1台で家全体を暖められる
床下エアコンは1階の床だけでなく、上昇する暖気により間取りによっては家全体を暖めることが可能です。そのため部屋ごとの寒暖差が小さくなり、冬場のヒートショックのリスクを軽減できます。注意点として、床下エアコンは冷房には不向きなので、暖房運転のみ使用しましょう。
•エアコンの修理や取り替えがしやすい
床下エアコンはルームエアコンを使用するため、故障したときの修理や取り替えがとても簡単でコストも大きくありません。
【デメリット】
•エアコンの補償は受けられない
床下エアコンにはルームエアコンを使用しますが、エアコンメーカーとしては床下エアコンとしての使用を想定していないため、エアコンが故障した場合は保証対象外となる可能性があります。
•基礎工事にコストがかかる
床下エアコンは床下で暖気を循環させるために基礎の立ち上がりを減らした分、地中梁による基礎の補強が必要です。
また、床下エアコンは基礎断熱が必須です。基礎断熱とは基礎の立ち上がり部分に断熱材を施工する工法で、床下エアコンから床下空間に送った暖気を逃がさないために欠かせません。基礎断熱は断熱性・気密性が高い一方で、シロアリ被害やカビのリスクがあるため、経験値の高いハウスメーカーや工務店を選びましょう。
光熱費や初期費用、立ち上がりに要する時間は?
続いて、床暖房と床下エアコンの光熱費や初期費用、立ち上がり時間の目安を詳しくみてみましょう。ただし、メーカーや床暖房の種類によって差があるため、一例として参考にしてください。
光熱費
床暖房にかかる1カ月の光熱費は、以下の条件で【ヒートポンプ式4500円<電気式8400円<ガス式9000円】です。
【床暖房の使用条件】
10畳、床温30℃の設定で1日8時間連続稼働、外気温約7℃
床暖房のなかではヒートポンプ式が最も安いという結果に。床温30℃は強めの設定のため、弱運転ならもっと光熱費を削減できます。ただし、これは床暖房10畳分のみの光熱費であり、他の部屋で暖房器具を使えばその分の光熱費がかかります。
一方、床下エアコンにかかる1カ月の光熱費は、以下の条件で1万2000円程度です。
【床下エアコンの使用条件】
28坪、エアコン設定温度22℃で1日24時間稼働、外気温約6℃
数字だけみると床暖房よりも光熱費が高額ですが、他の暖房器具の出番はかなり抑えられる可能性があります。というのも、床下エアコンは1階の床を全体的に暖められますし、暖かい空気は上昇するため、空気の流れを計算して間取りを設計すれば2階にも暖気は届きます。また、床下エアコンはスイッチを切った後も基礎のコンクリートに蓄えられた熱によって暖かさが続きます。24時間稼働させなくても、夜中にエアコンをつけておいて日中はエアコンを切るという使い方をすれば光熱費を抑えられます。
初期費用
床暖房の場合、10畳分の部材費の目安は50~90万円です。部材費に加えて、熱源機の設置費用や工事費も必要です。種類別では、ヒートポンプ式>ガス式>電気式と、ヒートポンプ式の初期費用が高い傾向にあります。ヒートポンプとは空気中の熱エネルギーを集めて熱を移動させる技術で、エアコンや給湯器に使われています。この技術のおかげで光熱費が抑えられるのですが、初期費用は高額になります。
対して、床下エアコンはルームエアコンを設置するため設備自体の費用は安いのですが、基礎工事にコストがかかります。床下エアコンは床下空間で暖気を循環させるため、基礎の立ち上がりを少なくする必要があります。それに併せて、耐震性確保のために地中梁での基礎の補強が必須です。また、床下の暖気が逃げてしまうと床下エアコンの効果がないため、高気密・高断熱を徹底しなければなりません。高性能住宅でこそ床下エアコンは力を発揮できるというわけです。
立ち上がり時間
床暖房や床下エアコンのスイッチを入れてから部屋が暖かくなるまでにかかる時間を立ち上がり時間といいます。
床暖房で最も立ち上がりが早いのはガス式で、スイッチを入れてから10分ほどで床が暖かくなり始めたことを感じられ、1時間もあれば部屋が暖まります。ヒートポンプ式は2.5時間、電気式は5時間とかなり時間を要します。立ち上がりに時間がかかるタイプはスイッチをこまめにオン/オフするよりも弱運転で連続運転したほうが、なかなか暖まらないストレスと光熱費を軽減できるでしょう。
床下エアコンは、高断熱・高気密に加えて、日射により太陽の熱を取り込めるようなパッシブ設計の場合、1~2時間で部屋が暖まります。
設置が簡単で暖かさを感じやすい床暖房、高性能住宅なら床下エアコン
足元から暖かく快適な床暖房と床下エアコンですが、その特徴は似ているようで全く異なります。 床だけでなく家全体を暖めることも可能な床下エアコンは、高断熱・高気密の家でなければその力を発揮できません。床暖房は、わずかなスペースに大きなコストはかかりますが、高性能住宅でなくても設置でき、しっかりとした暖かさを感じられます。 まずは「高性能住宅かどうか」という点に着目して考えてみてくださいね。