いい家づくりコラム

見えない結露が実はいちばん怖い。結露に強い壁の大原則

2025.1.20

壁の中が結露する壁体内結露。窓の結露とちがい、壁体内結露は目に見えないため発見が難しく、結露のなかでも最も怖いものです。
壁体内結露への対策は家づくりの基本中の基本。にもかかわらず、予算の都合や知識不足などで、対策が甘くなってしまうことが少なくありません。

今回は、「これを知らずしていい家は建てられない」というほど重要な、結露に強い壁を作る大原則についてお伝えします。


壁体内結露はなぜ起こる?

結露は、湿気を含んだ暖かい空気が温度の低い物に触れたとき、空気中の水蒸気が冷やされて水滴となる現象です。壁の中で結露が起きてしまうのは、壁の中に湿気があるから。冬は室内が暖かく外が寒い、夏は室内が涼しく外が暑い。壁の中に湿気があると、この温度差で結露が発生してしまうのです。

壁体内結露は、壁の中の断熱材や家の骨組みにカビを発生させ、やがては腐らせてしまいます。人の健康や家の寿命を脅かす恐ろしいものなのです。

壁体内結露が発生する仕組み
【壁体内結露が発生するしくみ】


結露に強い壁を作る大原則

結露に強い壁作りの大原則は4つあります。

1. 室内側に透湿抵抗の高い防湿層を設ける

室内では調理や入浴などで湿気が多く発生します。この湿気が壁の中に入り込むのを防ぐために、湿気を通さない透湿抵抗の高い防湿層を室内側に設けます。湿気を通さないバリアを張ることで、壁体内結露の原因となる湿気の大部分をシャットアウトできます。

2. 壁に入り込んだ湿気を素早く排出する通気層を設ける

防湿層を設けても、屋内から壁に浸入する湿気を100%防ぐことはできないため、浸入した湿気を逃がす出口が必要です。この役割を果たすのが、家の外壁側の通気層です。通気層は室内から浸入した湿気を排出するだけでなく、万が一外から雨水が浸入した場合も通気によって壁の中を乾かすことができます。

3. 気流止めを確実におこなう

気流止めとは、その名の通り空気の流れを止めることです。家は土台の上に柱が立ち、そこから床と壁を作ります。この床と壁の継ぎ目にはすき間ができやすく、しっかりとふさいでおかないと床下から空気が入ってきてしまいます。「空気が入る=湿気が入る」ため、壁体内結露の防止には気流止めが欠かせないのです。
同様に、壁と天井の継ぎ目もピタッとふたをしておくことで、室内の湿気を含む空気がすき間から壁に入り込むのを防げます。

4. 断熱材をすき間なく入れる

断熱材は連続してすき間なく入れることがとても重要です。断熱材を入れる際に小さなすき間ができてしまうと、すき間部分に湿気がたまりやすくなる上に、すき間部分の断熱性が低下して熱の通り道ができ、壁体内結露を引き起こしてしまいます。


【もうひとつの大原則】通気の出口を作る

前述の4つの大原則に加え、近年、より重要度が高まっているのが、通気の出口をきちんと作ることです。

近年、ゼロ軒(のき)と呼ばれる、軒のない家が多く見られます。スッキリとした外観が若い人を中心に支持されているようです。
軒には雨や日差しから家を守る役割がありますが、ゼロ軒住宅は軒がない分、雨水が浸入するリスクが高いため、通気層の出口が完全にふさがれてしまうことがあります。コーキングでガチガチに固めると止水効果は高いのですが、空気の通り道がふさがれて湿気を排出することができず、壁体内結露の原因となります。

こうした失敗は、デザイン性の高さを追求した現場知識の少ない設計士や見よう見まねでゼロ軒住宅を作る人にありがちです。ゼロ軒住宅であっても、通気金物を入れて通気の出口をしっかりと確保しましょう。


ルーフバルコニーの施工に注意

デザイン性の高さに加え、コストを抑えるために「ゼロ軒住宅+ルーフバルコニー」を選択する人が少なくありません。ルーフバルコニーの手すり部分には壁を活用しますが、前述のように雨漏りを恐れてガチガチに止水処理をしてしまうと空気の通り道をふさいでしまいます。湿気がたまった壁が太陽光で暖められると壁の中はサウナの状態になり、とくに梅雨の時期はカビが発生しやすくなります。ルーフバルコニーの手すり部分にもきちんと通気金物を入れて、空気の通り道を確保しましょう。

仕事にまじめに取り組む職人ほど、完璧に止水しようとコーキングで完全に固めてしまうことがあります。通気性と止水性の両立には、技術だけでなく知識も必要なのです。


見えないところだけど、お金をかける価値は大いにある

今回ご紹介した壁体内結露の対策は、家づくりにおいて重要かつ基本的なことなのですが、経験不足・知識不足・予算不足で省かれてしまうことが意外とあります。家が完成してしまうと外から見えないため、省きやすいともいえるでしょう。しかし、壁体内結露は人の健康や家の寿命を脅かすため、コスト削減のために通気金物を入れないなどの選択は決してしないでください。
空気の流れを止める必要のある箇所は確実に止める、通気させるべき箇所は通気の出口をきちんと確保して空気の流れを作る。このことはとくに、結露に強い壁を作るために必要だと覚えておいてくださいね。