いい家づくりコラム

窓イメージ

最強の暖房器具は『窓』と『太陽』

2025.2.20

寒い冬、部屋があまり暖まらないと感じると、新しい暖房器具を購入しようと考える人は多いと思います。しかし、新たに購入するべきは暖房器具ではなく「窓」です。

部屋が寒いのは、部屋の中の暖かい熱が窓から逃げてしまうことが大きな原因です。窓からの熱損失は想像以上に大きく、光熱費をかけて部屋を暖めるよりも、まずは窓の断熱性を高めたほうが賢明です。
今回は窓の断熱について詳しくお伝えしますので、ぜひ家づくりの参考にしてください。


熱は窓から逃げていく

みなさんは日常的にどんな暖房器具を使っていますか?手軽なものならエアコンや石油ファンヒーター、こたつ、少しコストがかかるものなら床暖房や蓄熱暖房器、これらを併用している人も多いでしょう。自分の家に合う暖房器具を選ぶことは大切ですが、それよりも優先すべきなのは窓の断熱性を高めることです。

部屋の中の熱は壁や床、換気扇などを通じて逃げていきますが、最も大きな割合を占めるのが窓です。実に、冬場の部屋から逃げる熱の58%が窓からと言われています。窓の断熱が不十分な部屋は、暖房器具を使っているのに寒い、もしくは暖房器具を強運転にしなければ部屋が暖まらず、余計に光熱費がかさんでしまいます。また、窓に結露が発生しやすかったり、ヒートショックの危険性が高まったりします。

窓からの熱損失を抑制できれば、余計な光熱費をかけずに部屋を暖かい温度に保つことができます。そのためには、高断熱の窓が欠かせないのです。


太陽は無料でこたつ1台分の暖をとれる

家を建てるときに日当たりの良さが重要視されますが、それは家の中が明るくなるからというだけではなく、冬に太陽の光が部屋に入ると暖がとれるというメリットもあるからです。

では、太陽から一体どれくらいの暖をとれるのでしょうか。
太陽の光は晴天時で330W/m²と言われています。実際に部屋の中に取り込めるのはその6割程度のため、198W/m²となります。
ここからさらに熱損失が発生するのですが、その程度は窓の断熱性が大きく影響します。

窓の断熱性能は熱貫流率U値(W/㎡・K)で表されます。熱貫流率は室内と室外に1℃の温度差があるとき1時間あたりに1m²を通過する熱量を表したもので、U値が低いほど断熱性が高いことを意味します。
【窓のU値2.0、室温20℃、冬場の正午の外気温5℃】と想定すると、温度差は15℃。U値2.0×15℃で、1m²につき約30Wの熱が外に逃げていきます。つまり、取り込める太陽の熱は最終的に198-30=168W/m²となります(U値の基準については次項で詳しく解説します)。

リビングの南面によく作られる掃き出し窓は1間(1けん)=2m弱(1953mm)で、その面積は約3.3m²です。この窓から取り込める太陽の熱は168W×3.3m²=554.4Wとなります。こたつの平均的な消費電力が600Wですから、こたつ1台分の熱を掃き出し窓から無料で得られるというわけです。

冬場に太陽の熱を最大限に活用するためには、南側の大きな窓から太陽光を取り入れることが大切になるわけですが、日当たりの重要性をわかっていても実際には追求しきれていない場合があります。窓から入る熱量が減らないよう、人間の感覚のみに頼って方位を決めるのはやめましょう。


窓の断熱性能、日本各地の基準は

前項でU値2.0という例を出しましたが、この数字がどの程度のものかというと、日本ではそれなりに性能の良い窓です。
窓には断熱性能表示マークというものがあり、これは「エネルギーの使⽤の合理化及び⾮化⽯エネルギーへの転換等に関する法律」に基づく国の制度で、☆0~6で表されます(☆が多いほど断熱性が高い=U値が低い)。
U値2.0は大体☆4の断熱性能です。(☆6はU値1.1、☆5は1.5、☆4は1.9、☆3は2.3、☆2は2.9~3.5、☆1は4.1~4.7、☆0は4.7以上)日本は地域ごとに窓の断熱性能の基準があり、北海道では☆5以上、東・中部日本では☆4~3以上、関東~九州では☆3以上とされています。

断熱性能の表示ラベル

これはあくまで基準であり、基準を上回る断熱性能を兼ね備えた窓は、家をより快適なものにします。暖房費の削減、ヒートショックのリスク低減、結露によるカビの抑制といったメリットが大きくなるため、ぜひ基準以上の窓の設置を検討してください。


Low-Eガラスは種類によって設置する方角が違う

窓は二重窓やペアガラスにすると断熱性が飛躍的に向上します。ガラスが複数枚あることでガラスとガラスの間に空気層ができ、窓からの熱損失が抑えられ、室内の温度が安定しやすくなるからです。

このような複層ガラスの遮熱・断熱効果を高めたものにLow-Eガラスがあります。
Low-Eガラスはガラスの表面に熱を反射する特殊なコーティングを施したもので、遮熱型と断熱型(取得型、一般型とも呼ばれる)の2種類があります。ペアガラスのうち、外気に面しているガラスの裏側にコーティングされているものが遮熱型、室内側ガラスの裏側にコーティングされているものが断熱型です。

Low-Eガラスは部屋の向きによって遮熱型と断熱型を使い分ける必要があります。
遮熱型は太陽光の輻射熱を反射するため、南側に設置すると日射取得率が6割からさらに低下してしまいます。南側ではなく、北・東・西の窓へ設置しましょう。
断熱型は太陽の熱を反射せず、室内の熱も逃がしにくくする効果があるため、南の窓に設置しましょう。


快適な家をつくるなら「窓」を優先しよう

せっかく家を建てるなら、部屋やキッチンなどこだわりたい箇所はたくさんあると思います。しかし、家は快適であることが大前提。高断熱の窓にすれば、「暖房が効かなくて寒い」「結露がひどくカビが心配」といったことは、ほぼ起きません。部屋ごとの温度差が小さくなるため、ヒートショックのリスクが減り、健康を守ることにもつながります。快適に暮らせる家をつくりたいという人は、ぜひ高断熱の窓の採用を優先的に考えてみてくださいね。