
「太陽に素直な家」の基本は夏至・冬至ではなく大暑・大寒。窓と庇の設計で知っておきたい考え方
2026.8.20
「夏至と冬至を意識して窓の位置を決めましょう」。家づくりの本や工務店の説明で、一度は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。太陽の動きに合わせて窓と庇を設計するという考え方は、快適な住まいづくりの基本です。
ただ、この「夏至・冬至基準」には、実は見落としがちな盲点があります。今回は、太陽の動きと気温の関係を掘り下げながら、フィックスホームが大切にしている「太陽に素直な家づくり」の考え方をお伝えします。
1. 「太陽に素直な家」という設計思想
2. 太陽高度は計算できる。夏至78度・冬至32度の根拠
3. 庇の黄金比「10:3」
4. 気温には2ヵ月のタイムラグがある
5. 夏至・冬至ではなく「大暑・大寒」で考える
6. 庇だけでは限界がある。方位のずれとアウターシェード
7. まとめ。太陽に素直な家づくりのために
「太陽に素直な家」という設計思想
省エネ住宅設計の第一人者である松尾和也氏の教えに、「太陽に素直に家をつくりなさい」という言葉があります。太陽の動きを無視して窓の位置や大きさを決めてしまうと、夏は暑く冬は寒い、住み手にとって申し訳ない家になってしまうという戒めです。同じ間取り、同じ性能の家でも、太陽の動きをどこまで読み込んで設計したかによって、住み心地は大きく変わってきます。
この考え方を実践するうえでのポイントが、夏至と冬至です。夏至は太陽が出ている時間が最も長く、太陽の高さ(太陽高度)が最も高くなる日。冬至はその逆で、太陽が出ている時間が最も短く、太陽高度が最も低くなる日です。この2つの日を意識して窓と庇を設計する、というのが基本のセオリーとされてきました。
太陽高度は計算できる。夏至78度・冬至32度の根拠
太陽高度は、実は簡単な計算で求められます。地球の地軸は23.4度傾いているため、太陽高度は「90+23.4−その土地の緯度」(夏)、「90−23.4−その土地の緯度」(冬)という式で概算できます。
滋賀県(大津市付近)の緯度はおよそ35度です。この数字を当てはめると、夏至の太陽高度は90+23.4−35=78.4度、冬至は90−23.4−35=31.6度となります。夏はほぼ真上から、冬は斜め約32度の角度で日射が入る計算です。ちなみに東京は35〜36度前後、青森は40度を超え、鹿児島は32度程度と、緯度によって数字は変わりますので、お住まいの地域に応じて読み替えてみてください。
冬に太陽高度が低くなるからこそ、日射は家の奥まで届きます。この日射を暖房として活用できるかどうかが、冬の快適性と光熱費を大きく左右します。
庇の黄金比「10:3」
そこで重要になるのが庇(ひさし)の出方です。太陽高度が高い夏は日陰をつくり、太陽高度が低い冬は日射を遮らない。この両立を実現する目安として、「窓の高さを10とした場合、庇の出(窓上端の付け根から入射光までの距離)を3にする」という比率が提唱されています。
この「10:3」の比率で庇を設計すると、夏は強い日射をしっかりカットしながら、冬は低い角度で入る日射を妨げず、部屋の奥まで暖かい光を届けることができます。理屈のうえでは、これで夏も冬も快適な家が完成するはずでした。
気温には2ヵ月のタイムラグがある
ところが現実には、もう一段の工夫が必要です。というのも、太陽の動きと実際の気温の間には、大きなタイムラグがあるからです。
夏至は6月21日頃、ちょうど梅雨本番の時期です。雨が続いて鬱陶しくはありますが、真夏のような猛暑ではありません。そこから2ヵ月ほど経った8月になって、ようやく本格的な暑さがやってきます。これは、地表が太陽の熱を受けて温まるまでに時間がかかるためです。冬も同じ構造で、太陽が出ている時間が最も短い冬至を過ぎてから、家や大地がじわじわと冷え込み、寒さが本格化していきます。
つまり、暑さ・寒さのピークは、太陽高度がピークを迎える夏至・冬至そのものではなく、そこから少し遅れてやってくるのです。
夏至・冬至ではなく「大暑・大寒」で考える
日本には、四季をさらに6つずつに分けた「二十四節気」という美しい季節の区分があります。立夏(夏の始まり)、芒種、夏至、小暑、大暑、立秋……というように、それぞれの言葉に季節の移ろいが込められています。一つひとつの名前に意味があり、暦をたどるだけで季節がグラデーションのように移り変わっていく様子が見えてくる、とても豊かな考え方です。
このうち、夏の暑さのピークとされるのが大暑(7月23日頃)、冬の寒さのピークとされるのが大寒(1月20日頃)です。岐阜県立森林文化アカデミーの辻充孝先生は、著書『ぜんぶ絵でわかる7 エコハウス』の中で、「家づくりは夏至・冬至ではなく、大暑・大寒で考えるべきだ」と指摘しています。
近年の気候では、9月に入っても厳しい暑さが続くことも珍しくありません。辻先生は、夏至から白露(9月8日頃)までを一つの期間として捉え、この期間ずっと庇が効くように設計することを提案しています。フィックスホームとしては、さらに一節気ずつ幅を広げて、芒種(6月上旬)から秋分(9月23日頃)までを視野に入れて考えるくらいが、実際の暑さの体感に近いのではないかと考えています。
実際に白露の太陽高度を計算すると61度前後で、先ほどの「10:3」の庇では日射が室内にわずかに入り込んでしまいます。9月にまだエアコンを使う家庭が多いことを考えると、日射が入ることでせっかくの冷房効果が薄れ、電気代がかさんでしまうのは見過ごせないポイントです。より安全に考えるなら、春分・秋分(太陽高度55度前後)を基準に庇の出を検討しておくと安心です。冬の寒さについても同様で、大寒を基準に考えれば、冬至だけを目安にするよりも一段階余裕のある日射計画になります。
夏至・冬至という「太陽の動き」のピークだけでなく、大暑・大寒という「体感する気温」のピークに合わせて日射をコントロールする。これが、太陽に素直な家づくりを一歩深めた考え方です。
庇だけでは限界がある。方位のずれとアウターシェード
さらに実際の敷地では、窓が真南を向いているとは限りません。東や西に振れた向きの窓では、太陽の入射角がより緩やかになり、庇だけで日射をコントロールするのが難しくなります。庇を大きく出せば夏は快適になりますが、今度は冬の暖かい日射まで遮ってしまい、暖房効果が犠牲になってしまいます。
そこでフィックスホームがおすすめしているのが、以前のコラムでもご紹介した「アウターシェード」です。庇で基本的な日射コントロールをしたうえで、季節や時間帯に応じて開閉できるアウターシェードを組み合わせることで、庇だけではカバーしきれない朝日・西日や、方位のずれによる日射も柔軟に調整できます。
太陽に素直な家づくりのために
夏至・冬至を意識した設計は、家づくりの大切な基本です。しかし、実際に住み手が「暑い」「寒い」と感じるピークは、そこから少しずれた大暑・大寒にあります。太陽高度がピークを迎える日と、体感の暑さ・寒さがピークを迎える日には、約1ヵ月半から2ヵ月のズレがある。このことを知っているかどうかで、窓・庇の設計の精度は大きく変わってきます。二十四節気を一つひとつたどりながら間取りや窓の使い方を考えると、家づくりそのものがぐっと楽しくなるはずです。
フィックスホームでは、松尾和也氏に学んだ「太陽に素直な設計」の考え方をベースに、夏至・冬至だけでなく大暑・大寒までを見据えた窓と庇の計画、そしてアウターシェードによる補完まで含めてご提案しています。滋賀の気候・敷地条件に合わせた日射のコントロールについて気になる方は、ぜひフィックスホームにご相談ください。










