廊下のない家ってどうなの?メリットとデメリット、対策は
2024.6.20
限られたスペースを有効活用できる間取りとして「廊下がない家」を希望する人は少なくありません。廊下がないことで他の部屋が広くとれたりコストパフォーマンスに優れていたりと、廊下のない家には大きなメリットがあります。しかし、音もれやプライバシー確保などの容認しがたいデメリットもあります。
今回は廊下がない家の具体的なメリット、デメリット、デメリットを抑える工夫、廊下がない家をつくるコツについてお伝えします。平屋や2階建てなど、希望する家の形にかかわらず知っておいて損はない情報なので、ぜひ家づくりの参考にしてくださいね。
廊下がない家のメリット
コスパがよい
廊下をなくせば、省スペースになってコンパクトな家に仕上がります。廊下を構成する壁が減れば、ドアや照明などの付帯設備の数も減るため、材料費や設備費を抑えることができます。施工工程も減るため、施工期間が短くなり人件費が削減できる可能性もあります。
部屋を広くとれる
廊下をなくすことで、廊下が占めていたスペースを居室や収納に充てることができます。一戸建て住宅の一般的な廊下の幅は約80cmで、廊下を構成する壁もなくなるため、合わせて90cm以上のスペースを確保できます。
効率的な動線をつくれる
廊下に付随する壁がなくなることで部屋から部屋へ直接的に移動でき、移動距離を短縮できます。家事の最中は家中を移動することも多く、動線が悪いと非効率でストレスを感じることに。効率的な動線であれば時間と労力の節約になり、作業効率も上げることができます。
廊下がない家のデメリット
音やニオイがもれやすい
廊下がないと、廊下によって遮断されていた音やニオイが家の中に広がりやすくなります。食事のニオイが自室まで広がったり、間取りによってはトイレの音もれが気になる可能性があります。
トイレの配置に悩む
音やニオイの問題に大きく関わるのがトイレの位置です。廊下があれば音やニオイを遮ることができますし、廊下の端にトイレを配置できます。しかし、廊下をなくして壁を減らした間取りではトイレの位置を決めづらいと感じる人もいるでしょう。
プライバシーの確保が難しい
廊下がない場合、廊下を挟んで部屋を配置することができません。こども部屋や寝室も壁一枚で仕切ることになるため、話し声などの音がもれやすい可能性があります。また、人の気配を近くに感じることで安心感をもつ人もいれば、気が休まらずストレスを感じてしまう人もいるでしょう。
動線が交差しやすい
動線が交差していると、互いの活動時間が重なったときに動線上が混雑して移動がスムーズにいかず、不便に感じてしまいます。例えば、キッチン(家事動線)とトイレや洗面所(生活動線)の動線が交差している場合、調理中に人の往来が頻繁にあると危険です。また、来客動線と生活動線が交差していると、在宅中の家族が客間の近くを頻繁に行き来する状況になり得ます。
デメリットを抑える工夫
【動線】優先順位をつけて交差を最小限にする
動線に優先順位をつけ、優先度の高い動線と他の動線が交差しないよう間取りを設計しましょう。交差を最小限にするために、共有スペースとプライベートスペースをはっきりと分けて交差の重複を軽減する、間仕切りの数を抑えて広いスペースを確保することが有効です。
【プライバシー】視線と音を遮断する
廊下のない家でプライバシーを確保するためには、視線や音を遮断することが重要です。視線の遮断には間仕切りの設置が有効で、状況に応じて空間を区切りたいときは可動式の間仕切りが便利です。ロールスクリーンを使えばより手軽に視線を遮断できます。
音の遮断については次項へ続きます。
【音】防音(遮音)できる扉や壁を採用する
扉を閉めていても音がもれるのは、扉のわずかな隙間が原因です。加えて一般的な室内扉は中が空洞になっていたり1枚板であったりと扉本体からも音がもれ伝わってしまいます。防音扉は扉を閉めたときに隙間ができない構造で、扉本体も中に充填(じゅうてん)剤が詰まっており音もれを軽減します。例えば、部屋で大音量の音楽をかけていても、防音扉を閉めると部屋の外にはほとんど音がもれない程度の効果があります。遮音壁も、防音扉のように壁の内部にグラスウールという断熱材を詰めたり壁材の石こうボードを重ね張りしたりして音の伝わりを軽減します。
ただし、扉下の隙間には空気を取り込んで排気口から出すという換気の役割があるため、トイレなどの水回りには防音や遮音の機能に加えて通気機能もある扉を検討してみましょう。
【音】収納の位置を工夫する
部屋が隣接する壁にクローゼットなどの収納をはさむことで音を遮る方法もあります。収納内に物が多ければ多いほど遮音効果は高まり、防音材を活用するとより効果的です。
【ニオイ】換気計画をしっかり立てる
換気計画とは、空気の流れをつくり家の中の空気を効率的に入れ替えることです。換気量が少ないと室内の汚れた空気が排出されませんし、給気口と排気口を適切に配置しなければ空気がうまく流れず滞留するエリアができてしまうため、綿密な計画が重要です。換気計画は建築士や建設設備士、施工会社、換気システム業者といった専門家に相談できます。視点の異なるアドバイスを得られるため、複数の専門家に意見を求めることをおすすめします。
家が完成した後も、換気効率が低下しないよう、給気口や排気口のフィルターを定期的に清掃、交換するなどメンテナスを怠らないようにしましょう。
廊下がない家をつくるコツ
廊下のない家をつくるコツを4つご紹介します。
玄関ホールを小さくする
玄関からリビングやダイニングまでの距離を短くするために、玄関ホールを極力小さくします。玄関ホールから続く廊下がなく、玄関に次いでリビングやダイニングがある間取りです。面積が大きくないコンパクトな玄関でも土間を斜めにとることで狭さを感じにくく、使い勝手もよくなります。
階段をリビングに作る
廊下がない家におすすめしたいのがリビング階段です。好みが分かれる階段ですが、コンパクトでコストパフォーマンスに優れた家にするなら大変有効です。リビング階段には「冷暖房が効きづらくて夏は暑くて冬は寒い」というイメージがついていますが、高気密・高断熱がしっかり設計・施工されている家ならそのようなデメリットはありません。
加えて以下のようなメリットもあるため、ぜひリビング階段を検討してみてください。
◎ 必ずリビングを通るためコミュニケーションの機会が多い
◎ 幼いこどもが階段を利用する際に見守りやすい
◎ 動線が効率的になる
◎ インテリアのアクセントになる
トイレを外壁側に作ることにこだわらない
トイレの配置を外壁側にこだわらなければ、間取りの自由度がアップします。にもかかわらず、一戸建て住宅では「窓の設置」を理由にトイレが外壁側に配置されていることが多々あります。確かにトイレに窓があると開放的で採光もとれて明るい印象になりますし「窓を開けて換気すると気持ちがいい!」と考える人もいるかもしれません。
しかし、トイレの換気扇と窓の距離が近いと、窓から取り込んだ空気がそのまま換気扇から排出されてしまう「ショートサーキット」が起こる可能性があります。この現象が起こると、換気効率が非常に悪くなりニオイをうまく排出できません。
現在の家には24時間換気システムがあり、換気扇から十分に換気できるため外壁側にトイレを配置する必要はありません。また、窓がないトイレは外気温の影響を受けにくいため「冬のトイレが寒い」という問題を軽減でき、ヒートショックのリスクを抑えられるというメリットもあります。
通路に他の機能をプラスする
廊下のない家であっても、場所によっては人が通るための通路ができてしまいます。その場合、ただ通路として使うのではなく、他の機能を付け加えてみましょう。
【例】
・部屋干しツールを取り付ける
・カウンターデスクを造作してワークスペースにする
・壁に本棚や収納棚を造作する
・壁に写真やアート作品を飾ってギャラリーにする
・壁に黒板やホワイトボードを設置してこどもが楽しめる場所にする
・通路や2階のホールを拡張してセカンドリビングのような空間をつくる
工夫を凝らしてデメリットを補おう
廊下がない家には音やニオイ、プライバシーなどのデメリットはありますが、それを理解した上でしっかりと対策をすれば、使い勝手がよくコストパフォーマンスに優れた家を実現できます。ぜひ今回ご紹介したデメリットを抑える方法を参考にしながら、あなたのライフスタイルに合った機能的な家をつくってくださいね。