いい家づくりコラム

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片付けやすい家の極意|玄関・ダイニング・キッチン

2024.12.20

せっかく家を建てるなら、片付けやすくて常にキレイな状態をキープできる家にしたいですよね。
なぜ家が散らかるのかというと、物を元の位置に戻さないからですが、元に戻さないのは物の住所が決まっていなかったり戻すのに手間が発生したりするから。きちょうめんな人でなくても片付けられるような仕組みがあると、片付いた状態の家をキープできます。

今回は、片付けやすい家をつくるためのポイントを詳しくお伝えしますので、ぜひ家づくりの参考にしてくださいね。


家の片付けの極意はたったひとつ。物の住所を決める

片付け=整理・整頓と言い換えられますが、言葉の意味を改めて振り返ってみましょう。

整理:必要な物と不要な物を分けること。「好きな物と嫌いな物」「使う物と使わない物」でも構いません。
整頓:整理した物(分別して手元に残した物)をあるべき場所に収納すること。

物をあるべき所に収納するためには、物の住所を決めておかなければなりません。この「あるべき所」というのが重要で、適していない所に住所を決めても物は片付かないのです。適していない所とは余計な手間が発生する所で、あるべき所とは機能的でラクに片付けられる所を指します。

例えば、2階に立派なウォークインクローゼットを作っても、帰宅直後に上着を片付けに2階へ直行できる人はどれくらいいるでしょうか。とりあえずとリビングに脱ぎ捨ててはいませんか?物の住所は動線上につくるのがベストで、上着の場合、玄関そばにデイリークローゼットを設けることが有効です。その後の動線も、リビングに行く途中にサニタリー(洗面所)があれば手を洗ったり靴下を脱いだりと、帰宅直後の行動がスムーズに進みますよ。


収納が少なすぎると家は片付かない

家の中でとくに散らかりやすいのがサニタリー(洗面所)です。その理由は、サニタリーは洗濯機と洗面ユニットだけ、あっても最低限の収納という場合が多く、収納が少なすぎるからです。サニタリーは、ドライヤーや電動シェーバーなどの家電、スキンケア用品、メイク用品、スタイリング剤、洗濯洗剤など、想像以上に物が集まっています。また、入浴後にはタオルや下着、部屋着も必要ですよね。テレビドラマでは他の家族が「パジャマ、ここに置いておくね」と脱衣所から声をかけるシーンを見かけますが、日常的に使うことを考えれば本来はサニタリーに収納しておくべきものです。

前述のように、物の住所は動線上にあることがベストです。サニタリーの収納スペースが足りないからとリビング収納の一角を使用すると、行き来が面倒になって洗濯機や洗面台の上が散らかる原因になってしまいます。サニタリーに限らず、どこにどれだけの収納スペースが必要なのか把握した上で間取りを設計しましょう。


収納は奥行きがありすぎても片付かない

昔ながらの押し入れは奥行きが90cm程度あり、奥にしまい込んでしまうと取り出しにくい上に存在すら忘れてしまうことがありますよね。このように収納は大きければよいわけではなく、使い勝手も重要なのです。
例えばクローゼットの場合、よほどの大柄な人でない限り奥行き60cm強あれば十分。食器収納は30cm、サニタリー収納は45cmの奥行きを目安にしてください。


使用頻度の高い物はゴールデンゾーンに収納せよ

収納の位置は高すぎても低すぎても使いにくいものです。使いにくい収納は片付けが面倒になり、物が散らかる原因になります。収納にはゴールデンゾーンがあり、立った状態でスムーズに物の出し入れができる位置(床から80~90cmの高さ)がそう呼ばれます。ここが最も使い勝手のよい高さのため、使用頻度の高い物はゴールデンゾーンを中心に収納しましょう。
ただし、リビングは他の部屋と比べて家具の高さが低く、収納も低い位置のほうが使い勝手がよい場合があるため、しっかり検討しましょう。


誰もが片付けやすい方法で片付ける。収納量は8割まで!

家が片付いた状態をキープするためには誰もが片付けやすいことが重要です。きちょうめんな1人がせっせと片付けても他の3人が片付けられなければ、片付けが追いつかず散らかる一方ですよね。そのため、細かい分別はせず、ズボラな人や幼児でもできる方法で片付けていきましょう。

例えば、おもちゃならバスケットに放り込む。これなら幼児でも片付けられます。リビング学習をする小学生なら、宿題がおわったら自室に勉強道具を片付けさせるのではなく、リビングに勉強道具の住所を設けて「ここに置いてね」と約束するほうが片付きやすくなります。
また、収納スペースは物をパンパンに詰め込むと、物が取り出しにくく片付けも難しくなります。収納量はスペースの8割にとどめ、2割の余裕を持たせることを心がけましょう。


納戸をブラックボックス化させない

一軒家にありがちな広い納戸。住所不定の物をとりあえず放り込み、ブラックボックス化していることが少なくありません。納戸によくあるのが掃除機などの掃除用具ですが、掃除用具も動線を考えて適切な所に住所を決めておけば、掃除しようと思ったときにサッと取り出せて手早く掃除ができるため、家のキレイをキープしやすくなります。ロボット型掃除機かスティック型掃除機かで必要な収納の広さも形も違うため、計画的に収納を作ることが望ましいです。「無計画に作る納戸は要らない」と考えておきましょう。


収納は立面でも考える

収納を平面で考えたら、立面でも確認することが重要です。重さのある本は収納の下に仕舞う、こどもの手に触れさせたくないものは上に仕舞うというように、物によって収納する高さを変えますよね。平面図では幅と奥行きしか読み取れませんが、立面図で高さを確認することで、稼働棚の位置が具体的になり使用時のイメージがわきやすくなりますよ。


【スポット別】片付け・収納のヒント

ここからは玄関・ダイニング、リビング・キッチンの片付けについてスポット別に補足していきます。

〈玄関〉

玄関は港。まずは玄関で分別しよう。
港のように、玄関は物の搬入口です。片付けやすい家の理想としては、まずは玄関で物の仕分け(整理=必要な物と不要な物を分ける)ができることが望ましいです。例えば、不要なチラシは玄関のゴミ箱に捨てる、宅配便は玄関で段ボールから出すなど、ゴミを家の中まで持ち込まないようにしましょう。

狭い玄関は片付かない!必要な玄関スペースの決め方
狭い玄関は、靴が散乱したり小物を無造作に置いたりと散らかる原因に。では、必要な玄関スペースの目安をどのように決めたらよいかというと、以下の4つの手順を参考にしてください。

①靴の数と形を把握する



一軒家のシューズボックスは学校の靴箱のように一足ずつ納めるのではなく、長い横板の上に何足も靴を並べるため、1段に収まる数が靴のサイズによって異なります。サイズの小さな靴は1段に3足収められても、サイズの大きな靴は2足しか収まらない場合が多々ありますよね。また、ハイヒールやブーツを収納するには高さも必要ですし、幼いこどもが成長すればその分スペースが必要になります。そのため、将来のことを見通した上で家族の靴の数と形をおさえておきましょう。


②家族の行動パターンを確認する



鍵はいつもどこに置いているか、ハンカチやティッシュを準備するタイミングなど、家族のお出かけ前の行動パターンをチェックしましょう。お出かけ前にいつもハンカチや帽子を忘れて室内に取りに戻るようなら、玄関にそれらを収納できるスペースをつくると効率的に動けますし、玄関に小物を無造作に置いてしまうことも防げます。


③来客頻度を確認する



来客の多い家なら、玄関スペースを広く明るくしたほうが来客対応しやすく見栄えもよいでしょう。反対に、家族以外にほとんど人の出入りがないなら、玄関スペースは必要最低限で問題ありません。


④玄関に置きたい物をリストアップする



傘やベビーカー、外遊びグッズ、スポーツ用品、アウトドア用品、カー用品、ペット用品、防災グッズなど、玄関におきたい物は人によってさまざまです。段ボールなどの資源ゴミを玄関に収納したいという人もいるでしょう。また、電動自転車のバッテリーを玄関で充電したい場合には、コンセントも必要です。靴の脱ぎ履きのために小さな椅子を置きたくてもスペースがない場合は、2段の斜め框(かまち)にするという方法も。框が腰かけるのにちょうどよい高さになり、1段の高さも低くなるため上がるのもラクになります。
使い勝手のよい玄関になるよう、玄関に置きたい物を家族でリストアップしましょう。

予算に余裕があるなら2way玄関もあり

2way玄関とは、玄関にウォークインクローゼットなどを併設して2つの動線がある玄関のことで、利便性と収納力の高さが魅力です。感染症対策や汚れを玄関から中に持ち込まないように手洗い場を設けたり、上着用のクローゼットを設置したりと用途にあわせて設計できます。
2way玄関は広いスペースの確保というデメリットがありますが、収納力が高いため使い勝手がよく、片付いている玄関を常にキープできますよ。

〈ダイニング・リビング〉

キレイなリビングの秘訣はダイニングにあり
家の中でも散らかりやすいダイニングとリビング。このスペースがキレイに保たれているとストレスも減りますよね。実は、ダイニングの設計によってリビングの片付きやすさが左右されることをご存じですか?
ダイニングはリビング以上に生活の中心的な場所です。ダイニングが持つ役割は、①食事やお茶をする「団らんの場」②裁縫など家事の「作業場」③こどもや大人の「学習の場」の3つ。ダイニングの役割を把握することで必要な収納が明確になり、ダイニングの機能性を高めることにつながるため、隣接しているリビングが散らかりにくくなります。

ダイニングにはどんな収納が必要?

ここでは、ダイニングに必要な収納を考えてみましょう。

こども関連



こどもがリビング学習をする場合、こどものテキストや文具、ランドセルなどもダイニングに置けると便利ですよね。大人も日常的にダイニングで仕事をするなら、デスクを置いたほうが便利な場合もあるでしょう。また、こどもが幼い場合、おもちゃの収納スペースも確保しておかなければなりません。「こどもはすぐに大きくなるから、おもちゃが活躍するのは一時的」ではありません。性格にもよりますが、小学生のうちはおもちゃで遊ぶこどもが多いでしょう。兄弟がいればさらに長期的になるため、おもちゃの収納スペースは必須です。


趣味・インテリア関連



大きな水槽を置きたい、フィギュアを飾りたい、お酒を並べて置きたい、ミシンを置きたいなど、趣味によって必要なスペースに差があります。インテリア雑貨を飾るのが趣味という人もいるでしょう。大きな物を置く場合は必ず計画に盛り込んでおきましょう。


メモリアル関連



デジタル化が進んでいても、昔のアルバムや結婚式、七五三などの写真が手元にある人は多いのでは。アルバムは厚みも大きさもある上に少しずつ増えていくため、収納スペースを確保しておきましょう。


書類関連



家電の説明書や保険の書類など、保管しておかなければならない書類は少なくありません。広いスペースを用意する必要はありませんが、棚の1段分程度は確保しておくと安心でしょう。

〈キッチン〉

把握しておくべきキッチンの物
ダイニングと同じく生活の中心的な場であるキッチンには大量の物が集まっています。「収納が足りなかった!」と後悔しないよう、物の量を把握しておきましょう。

食器や鍋類の種類や量



食器や鍋類は家族構成や好みによって種類や量に幅があります。いろいろな食器を集めるのが趣味、料理が趣味でたくさんの調理器具をそろえているという人は、ボリュームをしっかりと確認しましょう。


食品ストックの量



生鮮食品は冷蔵庫に入れるとして、乾物や調味料、レトルト食品などのストックの量も人によりさまざま。育ち盛りのこどもがいると、お菓子類のストックも膨らみますよね。また、こまめに買い物に行く人と週末に買いだめをする人では必要な収納力が変わってきます。


キッチン家電



炊飯器やトースター、ミキサー、コーヒーメーカー、自動調理鍋など、キッチン家電は大きさがありスペースを使うため、キッチンのどこに置くのかあらかじめ決めておきましょう。


ゴミの保管



ゴミの量は家族構成や自治体の分別ルールによって大きく変わります。家を建てるのを機に他の地域に移り住む場合は、必ず分別ルールや回収頻度を確認しておきましょう。

キッチンはとくにゴールデンゾーンを意識して収納しよう

キッチンは「調理して片付ける」を頻繁におこなう場所です。頻繁に物の出し入れがあるからこそ、より片付けやすさを意識した収納が重要です。使用頻度の高い物は立った状態でスムーズに物の出し入れができるゴールデンゾーンに収納し、年に数回しか使わない物は、軽い物は高い位置、重い物は低い位置に収納しましょう。

ワークトライアングルで効率が上がる

ワークトライアングルとは、シンク・冷蔵庫・コンロを線で結び、正三角形であれば作業効率がよいという動線の考え方です。キッチンは毎日作業する場所のため、作業効率がよいほど片付きやすくなります。配置に迷ったときはワークトライアングルを参考にしてみてください。


プロの手を借りてキレイが続く家を建てよう

今回は、物の住所を決めるというシンプルなことから、立面やゴールデンゾーン、ワークトライアングルで考えるなど専門的なこともお伝えしました。ご自身ですべてのポイントを家づくりに盛り込むのはなかなか難しいと思います。ぜひプロにしっかりと相談しながら、片付きやすい家を実現してください。