失敗しない住宅ローンの考え方(2)~賢い借り方・返し方~
2017.7.19
返済が長期間にわたる住宅ローンでは、どう借りるか、どう返すかがとても重要。自分たちのライフプランに合った返済期間を設定したり、繰上げ返済にこだわることで、最終的な返済金額に大きな差がつくこともしばしばあるのです。
失敗しない住宅ローンの考え方・第2弾となるこのコラムでは、そんな住宅ローンの賢い借り方・返し方について、詳しくお伝えしていきます。
1. 住宅ローンの種類を知ろう
2. 住宅ローンを賢く借りるポイントは「返済期間」
3. 「繰上げ返済」で住宅ローンを賢く返す
4. 2種類の繰上げ返済から、自分に合ったものを選ぼう
5. 住宅ローンを選ぶときには「繰上げ返済の条件」も要チェック!
6. 借りた額は同じでも、借り方・返し方で差がつく!
住宅ローンの種類を知ろう
住宅ローンの種類は大きくわけて「民間ローン」「公的ローン」「協調ローン」の3つ。それぞれ条件や付随サービスなどに特徴があります。
(1)民間ローン(主体:銀行ローン)
民間の金融機関(銀行や信用金庫、生命保険会社など)が取り扱う住宅ローンのこと。各社それぞれに個性的なサービスがあるのが特徴です。
たとえば、手続きをすべてネット上で行うことで手数料などの費用を抑えたものから、自社や関連会社のサービスに連動してさまざまなメリットを受けられるものなど。普段よく利用するサービスに連動したものがあるなら、利用を検討してみましょう。
(2)公的ローン(主体:自治体などの公的機関)
「財形住宅融資」や「自治体融資」などの住宅ローンのこと。勤務先で財形貯蓄を1年以上行っていて、残高が50万円以上ある人が利用できる「財形融資」というものもあります。これは民間融資やフラット35と併せて利用することも可能なので、財形貯蓄を行っている人は勤務先に確認してみましょう。
また、都道府県や市町村が独自の融資制度を行っている場合もあります。直接自治体が融資を行うほか、所定の金融機関での借り入れ利子を一定期間補給するタイプなど、内容も自治体によって異なります。制度がない自治体もあるので、まずは自宅や勤務先がある自治体に問い合わせてみましょう。
(3)協調ローン(民間ローンと公的ローンの中間的存在)
別名シンジケートローンとも呼ばれ、同じ条件で複数の銀行から融資を受けることを言います。この代表格に位置するのが「フラット35」で、住宅金融支援機構と民間金融機関との連携で行われています。窓口になるのは民間金融機関で、どこを選ぶかによって金利が異なります。
住宅ローンの諸費用について
ローンを選ぶ際には、「諸費用」のことも忘れないように。合計で70~80万円かかることもあるため、1円でも安い金融機関を選ぶことがポイントです。
諸費用の内訳は、「融資手数料」または「事務手数料」、そして「ローン保証料」。
「融資手数料」または「事務手数料」は、住宅ローンを借りる時に必ず掛かるお金で、金融機関によって一定額だったり、融資額の○%など、金額も異なります。
「ローン保証料」は返済が滞った時に、保証会社が銀行への返済を立て替えるための費用です。この保証料は一括払いの場合と、金利に上乗せする形で毎月支払う方法があります。
融資手数料は定額なのか、それとも定率なのか。また保証料はどのように支払うのかなど、事前にしっかりと確認しておきましょう。
住宅ローンを賢く借りるポイントは「返済期間」
最終的に支払う総額を左右する「返済期間の長さ」は、住宅ローンを賢く借りるポイントです。
理想は、定年前に住宅ローンを完済すること。定年退職すれば収入が激減しますし、最近は55歳から年収が減る企業も増えています。退職金をあてにする人もいますが、近年は退職金の支給額自体が下がっているので、あてにし過ぎは危険。定年までに返済を終えられれば、老後を安心して迎えられますよね。
しかし、それを阻むのが「月額返済額」です。返済期間を短く設定しすぎると、月々の返済額が高くなってしまい、毎月の生活にムリが生じてしまうことも。そうならないよう出産予定や子供の進学など、未来のライフプランを視野に入れつつ、いくらまでならムリなく支払えるかを考えておくことが大切です。
月々の返済額と返済期間のバランスをとりながら、うまく返済期間を設定するのはなかなか難しいもの。住宅ローンのシミューレーションサイトを利用して、具体的な金額を算出するのも目安になるでしょう。
「繰上げ返済」で住宅ローンを賢く返す
住宅ローンをお得に賢く返すには、なんといっても「繰上げ返済」です。なぜ繰上げ返済がお得なのかというと、利息ではなく「元金を減らせるから」。
一般的に住宅ローンは、借りた金額(元金)に応じて決められた金利分の利息を上乗せして返済するため、元金が多い間は利息の金額も多くなります。借りてすぐの頃は、返済している金額の半分以上が利息だったりすることも・・・。つまり、返済してもなかなか元金が減らないのです。
しかし繰上げ返済では元金を返済できるので、元金だけでなく利息も減らす効果が。繰上げ返済はなるべく早く行なって、元金を減らしてしまうのが賢いのです。
ただし、住宅ローン控除を受けている場合、借入れ日から最終返済日までの期間が10年未満になると、その後の控除が受けられなくなるため、繰上げ返済の急ぎすぎにもご注意ください。
繰上げ返済を行なうために重要になってくるのが、ボーナスの存在。しかし、長い返済期間のなかでは、常にボーナスが予定通り出るとは限りません。返済に余裕をもつためにも、ボーナスを最初から返済計画に組み込むのは避けましょう。
あくまでも毎月の収入で返済できる範囲でローンを組み、ボーナスが出て余裕があるときに繰上げ返済をするのがオススメです。
2種類の繰上げ返済から、自分に合ったものを選ぼう
繰上げ返済には2つのタイプがあります。1つが「期間短縮タイプ」、もう1つが「返済額軽減タイプ」です。
(1)繰上げ返済:期間短縮タイプ
毎月返済する金額は変わらず、返済期間を短縮するタイプです。利息軽減効果が高いのが特徴です。教育費など、他の資金手当ができている人や、老後にローンを残したくない人に向いています。
(2)繰上げ返済:返済額軽減タイプ
返済期間は変えないで、毎月返済するお金を減らすタイプです。期間短縮タイプと比べて利息軽減効果は低くなりますが、毎月の返済額を減らせるのがメリット。教育費などの資金を確保したい人や、数年後に家計に余裕が出る人に向いています。
計画的に繰上げ返済するには、事前のシミュレーションが有効です。無料で繰上げ返済シミュレーションができるサイトもありますので、ぜひ利用してみましょう。
住宅ローンを選ぶときには「繰上げ返済の条件」も要チェック!
上で述べてきたように、メリットが大きくぜひ活用したい繰上げ返済ですが、住宅ローンによってその条件はさまざまです。繰上げ返済をするのにも手数料が数万円単位でかかるローンや、100万円程度のまとまった金額でないと繰り上げ返済できないローンなど。
住宅ローンを選ぶときには、繰上げ返済の手数料や最低金額のチェックを忘れずに。こうした少しの差が、こまめな繰り上げ返済を可能にし、最終的な返済額の大きな差をうむのです。
借りた額は同じでも、借り方・返し方で差がつく!
金利以外にも、特徴的なサービスや手数料など、住宅ローンの条件はさまざま。自分たちの返し方に合ったローンを選べば、小さな差が積み重なり、最終的に大きな差がつきます。
金利を優先するか、繰上げ返済の条件を優先するか、はたまた生活のなかでよく使うサービスで優待が受けられることを優先するのか・・・自分たちの未来のライフプランを想定して、返し方までしっかりシュミレーションすることで、ぴったりのローンが見えてきます。