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断熱材のおすすめは?住宅のプロが長所と短所を解説

2018.4.20

四季を通じて住み心地の良い家をつくるには、断熱性能を高めることが欠かせません。そこで前回は、家づくりの際にこだわりたい断熱工法について、「長所と短所でしっかり理解!家の断熱工法いろいろ」でご紹介しました。

今回は、その断熱工事で使用する「断熱材」にスポットを当てていきます。
断熱材にもいろいろな種類があり、それぞれに特徴や長所、短所があります。快適で省エネな家作りのためには、どんな断熱材を選べば良いのでしょうか?
住宅のプロの視点から、チェックすべきポイントをご紹介していきましょう。


「繊維系断熱材」と「発泡プラスチック系断熱材」の違い

断熱材の種類は、「繊維系」と「発泡プラスチック系」の2つに大別できます。
「繊維系断熱材」は、細い繊維が絡まりあった断熱材で、抱え込んだ空気の層が断熱の働きをしてくれます。フェルト状、わた状、ボード状など、さまざまな形状に加工されています。
原材料別に見ると、ガラスからできているグラスウールや鉱物原料のロックウール、植物繊維を使ったセルロールファイバー等が挙げられます。最近は羊毛や炭化コルクといった素材も多く見られるようになってきました。

一方「発泡プラスチック系断熱材」は、プラスチックを発泡させて、細かい気泡を含ませた断熱材。気泡が抱え込む空気が、断熱の働きを担います。ボードタイプと、現場で吹き付けてその場で発泡させるタイプがあります。
発泡プラスチック系の断熱材は、繊維系に比べて水や湿気に強いという特徴がありますが、一般的に価格が2〜3.5倍ほど高くなるデメリットもあります。


繊維系断熱材の種類別メリット&デメリット

グラスウール

木造住宅で最も多く使われているのがガラス繊維を原料にしたグラスウールです。
メリットとしては、耐火性が高いこと、柔軟性があるため木材の収縮や建物の揺れに対応しやすいこと、コストパフォーマンスの高さなどが挙げられます。
また吸音性も高いため、住宅密集地などで音の問題が気になるときに役立つのも魅力。
デメリットとしては、湿気に弱いこと。結露を起こすと断熱性能が低下してしまうため、壁のなかで結露を起こさないよう、しっかり対策を講じることが必要です。

ロックウール

次に多く使われているのが岩石などを原料としたロックウール。グラスウールと性質が似ていますが、やや価格は高くなります。撥水性が高いため水に濡れても乾きが早く、断熱性が損なわれにくいところがメリット。ただし重いため、自重によって隙間ができないよう、施工に注意が必要です。

セルロースファイバー

新聞古紙など、植物繊維を原料にしたセルロースファイバーは、耐火性、防音性、防虫性などを持つ繊維系の断熱材です。グラスウール、ロックウールにないメリットとして、調湿性を持ち、結露しにくいことが挙げられます。
デメリットとしては、重いためしっかり吹き込まないと沈下する恐れがあること。沈下すると上部に隙間ができるため、断熱性が下がってしまいます。施工時はこの点をきちんと考慮し、ていねいに充填することが必要です。

羊毛

羊毛を原料にした断熱材・ウールブレスは、優れた調湿性能を持ち、結露に強い素材です。加えて防音性や防火性も持ち、腐りにくく耐害虫性もあるなど、メリットが多くなっています。欠点としては価格の高さが挙げられます。

炭化コルク

炭化コルクは、ワインの栓などの製造過程で余った端材を加工した、自然素材の断熱材です。メリットとしては調湿性があり結露を発生させにくく、弾力性や吸音性、耐害虫性、難燃性などがある点。ダニに対して忌避効果を持つといった特徴も持っています。
デメリットとしてはやはり価格の高さ。また、厚みが増すとカットしづらいといった、施工性の低さも挙げられます。


発泡プラスチック系断熱材の種類別メリット&デメリット

ビーズ法ポリスチレンフォーム・押出法ポリスチレンフォーム

ポリスチレン樹脂をビーズ状にして発泡させたものが、柔らかくて加工しやすいビーズ法ポリスチレンフフォーム。一方ポリスチレン樹脂に発泡剤などを混ぜ、押し出しながら堅いボード状に成形したのが押出法ポリスチレンフォーム。
どちらも水や湿気に強く、軽量なのが特徴です。ただし、両者とも比較的熱に弱いのが難点。

硬質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォームはポリウレタン樹脂を発泡させた断熱素材。現場で吹き付けるタイプのものは「自己接着性」を持つのが大きな特徴です。これは対象物に直接吹き付けるだけで、接着剤などを使わなくても強く接着し、断熱層を作ることができるというもの。ただ紫外線や雨にさらされると劣化が早いというデメリットもあります。

フェノールフォーム

フェノールフォームはフェノール樹脂を発泡させて、ボード状にした断熱材です。経年劣化しにくく、断熱性と耐火性に優れているのがメリット。デメリットとしては価格の高さが挙げられるでしょう。


断熱材選びは工法と予算に合わせて。業者選びも大切

断熱材はまず、充填断熱工法なのか外張断熱工法なのかによって、選べる範囲が決まります。そのなかで、予算に合わせてチョイスすることになります。

充填断熱工法なら、最も安価な断熱材はグラスウールということになりますが、湿気に弱い特徴があるため、採用するなら信頼のおける防湿措置が必須。
また体質的にシックハウスが特に気になるといった場合は、羊毛や炭化コルクといった自然素材も検討圏内に入ってきます。

外張断熱工法なら、ボードタイプの断熱材から選ぶことに。その際、断熱材に厚みがあるとそれだけ壁厚も増し、施工が難しくなりコストアップにつながります。そのためなるべく少ない厚みで断熱性の高いもの、そして燃えにくい素材を選ぶことが重要になるでしょう。

断熱材選び以上に大切なことが、「業者がその断熱材を適正に施工できるかどうか」。いかに高品質な断熱材を使っても、業者の施工技術が低ければ台無しになってしまいます。また、どの断熱材を選ぶにしてもそれぞれに必ず短所があるため、それに対してどんな対策を講じているのかもチェックのしどころ。

業者の断熱への意識の高さや、職人の施工技術を確認するには、なんといっても現場見学会がおすすめです。できれば実際に、断熱施工を行っているところも見学しておくと安心ですね。


フィックスホームのおすすめは3パターン

私たちフィックスホームでは、家づくりの予算に合わせて3つの断熱パターンを採用しています。
まず、コスト重視の場合は充填断熱工法で、断熱素材には水に強いロックウールを採用。もちろん断熱材に隙間ができないよう、施工には細心の注意を払います。

予算がもう少し確保できる場合は、充填断熱工法で、断熱素材には硬質ウレタンフォーム(ウレタン100倍発泡吹付)を推奨しています。コストと性能のバランスが良く、多くの支持を得ているパターンです。

予算に余裕がある場合には充填断熱(ウレタン100倍発泡吹付)+外張断熱のダブル断熱をおすすめします。この場合フィックスホームでは外張断熱に、仕上げ一体型外張り断熱システム・エコサームを採用しています。その理由は、高い断熱性能を持ちコストとのバランスが良いこと。さらに断熱材の上から左官仕上げができる意匠性の高さもポイントです。

高い断熱性能を得るためには工法や素材にこだわることも大切ですが、それ以上に大切なことが確かな施工技術。私たちは細部まで手を抜かない丁寧な施工で、上記のどのパターンにおいても、2020年省エネ基準を満たす高性能住宅を実現しています。

断熱工法と素材の組み合わせは多くのパターンが考えられ、工事の施工品質に至ってはピンからキリまで。だからこそ、工務店やハウスメーカーに工事を依頼する前に、その業者が得意とする断熱工法、推奨する断熱素材、断熱に対する考え方は、必ず確認されることをおすすめします。