パッシブデザインの設計ルール(1)太陽を味方につける窓
2017.11.22
前回は、省エネ住宅を建てるときの業者選びのコツについて、「省エネ住宅、頼れる業者を見きわめる6つのポイント」でご紹介しました。
今回のテーマはより具体的に、パッシブデザインの実際の物件に落とし込んだ設計ルール「窓編」です。私たちフィックスホームが、滋賀で多くの物件を手がけたなかで蓄積した、貴重なノウハウの一部をご紹介します。
これから省エネ住宅を建てようとお考えの方は、ぜひご参考にしてください。
パッシブデザインにおける、窓に関する設計ルール
(1)南面の窓は大きく、それ以外の窓は小さく
(2)庇(ひさし)を設ける
(3)屋外シェードを設ける
(4)東西北の窓は縦滑り出し窓を
(5)トップライトは避ける
(6)気密性の低い窓は避ける
窓はパッシブデザインのキーポイント
パッシブデザインにおける、窓に関する設計ルール
(1)南面の窓は大きく、それ以外の窓は小さく
できる限り、南側の窓面積は大きく取ります。そして、南以外の東、西、北面の窓は、通風と採光上問題のない程度で、できるだけ小さくします。
南面の窓は、冬に温かい太陽の熱を十分取り込み、暖房効率をアップさせるため大きく。それ以外の窓はできるだけ小さくすることで、熱がムダに逃げることを防ぎます。また、小さい窓から大きい窓へ向かって勢い良く風が流れ、風の通り道をつくることにも役立ちます。
(2)庇(ひさし)を設ける
南面の窓は冬温かい分、夏の日射をきちんと防がなくてはなりません。そのための基本的な装備が庇(ひさし)です。
太陽光の角度は夏至で80度ですが、冬至で30度、春秋分では55度となります。差し込む角度が大きく違うため、夏の日差しは庇でカットすることができます。
ただし冬の日差しは最大限取り込めるよう、窓の位置と大きさから、庇の長さの最適値を計算する必要があります。
(3)屋外シェードを設ける
さらに、夏の日差しをカットする方法として有効なのが屋外シェードです。季節に応じて開閉できるため、太陽光の取り込みとカットが自在に行えます。また高気密・高断熱住宅では、熱を屋内に入れないことが大切なのですが、その点でも熱を室内に入れてしまう室内カーテンで遮熱するより、屋外で遮ぎる屋外シェードのほうが効率が良いのです。
ポイントはシェードの色選び。色によって遮熱効果に違いがあるため、デザイン性だけで選ぶと失敗します。きちんとスペックを確認し、遮熱性の高いものを選びましょう。
(4)東西北面の窓は縦滑り出し窓を
南面以外の東西北の窓として、フィックスホームが推奨するのが「縦滑り出し窓」です。縦滑り出し窓のメリットは、非常に気密性が高く、少ない面積でも風を引き込んでくれる点。外観もスッキリしていて、デザイン性にも優れています。
デメリットとしては、雨が降ったときに屋内が濡れやすいところですが、窓の上に庇を設ければ、その点も解決できるでしょう。
(5)トップライトは避ける
逆にフィックスホームで避けることをおすすめしているのが、トップライト。
なぜなら、太陽の光をまともに受ける屋根に窓を設けると、南面では100%、東西北面であっても70%、強力な太陽熱が伝わることを避けられないからです。
トップライトを設置しつつ、省エネも実現したいという場合は、この熱をしっかり遮るための何かしら対策が必要です。さらに、近年激しさを増すゲリラ豪雨やスーパー台風への対策も講じることも忘れてはいけません。すべてを網羅しようとすると相当のコストがかかるため、フィックスホームでは推奨していないというのが実情です。
(6)気密性の低い窓は避ける
家そのものの気密性と断熱性を高めるため、避けていただきたい窓の種類があります。それが「ジャロジー窓」や「通風勝手口ドア」。
ジャロジー窓は別名ルーバー窓ともいい、何枚ものガラス板やアクリル板をブラインドのようにした構造になっています。室内で雨の日でも通風ができるのが利点ですが、隙間ができやすく断熱性が非常に低いうえ、防犯上も問題が。限られた熱を効率よく使いたいパッシブデザインの家では、ぜひ避けたい窓の種類になります。
通風勝手口ドアに関しては、将来的に気密性が改善されれば使用を考えても良いでしょう。
窓はパッシブデザインのキーポイント
冬の熱損失と夏の暑さ、多くの熱が「窓」を通じて家の中と外を出入りします。太陽光のパワーを活用するパッシブデザインにおいて、窓は成否を分けるキーアイテムとも言えるでしょう。
今回ご紹介した窓に関するノウハウは、フィックスホームが長年滋賀で家づくりに携わるなかで蓄積してきたもの。ですから一般論には当てはまらないかもしれません。
しかし、滋賀という土地で実際に建て、住んでみて、快適だったかそうでないのかという、実体験で淘汰されたノウハウです。ですからその土地の家づくりには本当に役立つ、生きた知恵ということが言えます。似た環境で家づくりをお考えの方は、ぜひご参考にしていただければと思います。
次回のコラムでは、パッシブデザインのなかでも間取りや建物の配置についてのノウハウをお伝えします。どうぞご期待ください。