パッシブデザインで家づくりの初期コストを抑え省エネに
2017.5.14
これからの家づくりに欠かせないキーワード、「省エネ」。家づくりで省エネを追求しようと思うと、「コストがかかりすぎる」という問題が立ちはだかります。
このコラムではいかにして初期コストを抑え「健康・省エネ住宅」を実現するか、そのために知っておきたいコツと知識をご紹介していきます。
答えは「太陽に素直なパッシブデザイン」
省エネ住宅向けの設備として、発電システムや給湯設備、空調システムや照明など、多くの最新省エネ設備が販売されています。
「太陽光発電」「地中熱利用」「全館空調システム」etc・・・これらはもちろん省エネ性能も高く、魅力的です。しかし、導入にはそれぞれ少額とはいえない初期コストがかかり、すべてを取り入れるのは現実的に不可能です。
ではどうするか?その答えが「太陽に素直な家」です。
「太陽に素直な家」とは、太陽光や自然の風など、自然のちからを利用して省エネを実現する家のこと。省エネ設備はアレコレ大量投入するのではなく、必要なものを吟味して取り入れます。
太陽に素直な家を設計するときのポイントは2つ。
(1)冬の光は取り入れ、夏の光は遮蔽する設計
(2)高気密・高断熱構造など、熱のロスをしっかりと防ぐ設計
この2つが「太陽に素直な家」の基本方針であり、「初期コストを抑えた健康・省エネ住宅」の要。専門用語では「パッシブデザイン(パッシブ設計)」と呼ばれています。
たとえば冬の正午、南面に向いた大きな窓であれば熱収支は約550w。こたつのヒーターが600wくらいなので、こたつ1台分近い熱を窓からタダで拾っているようなものです。
逆に太陽高度が高くなる夏の場合、ひさしがないと、こたつ1台分より多い熱が窓から入ってきます。ただしひさしできちんと日射遮蔽ができていれば、熱収支は1/10以下に激減。外から入ってくる熱を大幅に削減することができるのです。
このように、パッシブデザインは窓の大きさや配置、ひさしの形状などによって、相当量のエネルギーを節約することができる方法論。快適で省エネな家づくりにぜひ活かしたいメソッドです。
コストをかけるべき2つのポイントとは
パッシブデザインを取り入れたうえで、省エネ住宅としてコストをかけるべき部分は2つあります。それは「窓」と「給湯器」。
滋賀で多くの健康・省エネ住宅を手がけてきた経験から、効率よく省エネ効果を期待でき、ランニングコスト面でもメリットの高い設備として、この2点をご紹介したいと思います。
コストをかけるべき省エネ設備、ひとつめは「窓」
パッシブデザインを取り入れた省エネ住宅を実現するには、「窓」にこだわることが大切です。
冬の熱損失の内訳は、約5割が窓から。同様に、夏の暑さも窓などの開口部から入る割合が約7割です。せっかく冷暖房でつくった快適な温度が窓から逃げているとしたら、これほどもったいないことはありません。また、住宅に対する不満ランキングで過去3位に入ったことのある「結露」。これらすべてが窓の断熱性を高めることで解消することができます。
窓選びのポイントは、断熱性の高いペアガラスであること。またガラス部分だけでなく、サッシの部分も大切です。樹脂に比べて1,000倍も熱を伝えやすいアルミをサッシに使うなど、普通に考えればありえないこと。でも日本の窓業界ではその加工のしやすさから、アルミサッシが多く普及しています。
海外では窓の断熱性について厳しい基準があり、基準値より断熱性の低い窓は販売できません。しかし日本には残念ながらそうした基準がないのが実情。世界の基準に比べると、驚くほど断熱性の低い窓が普通に市場に出回っているのです。
省エネ住宅の窓は、樹脂サッシであることとペアガラスであることが必須条件。少しコストはかかっても、後々冷暖房費が抑えられることで充分なメリットがあることを覚えておきましょう。
もうひとつのポイント「給湯器」は、エコなものをチョイス
そしてもうひとつ、ぜひ選びたい省エネ設備が給湯器です。家庭で消費するエネルギーのなかで、最もエネルギーを使っているのが実は給湯。給湯を見直せば、かなりの省エネ効果が期待できます。
なかでもフィックスホームでおすすめしているのは「エコキュート(自然冷媒CO2ヒートポンプ式給湯機)」。空気中の熱を集め圧力をかけて高温にし、お湯をつくるシステムです。オール電化にして割安な深夜電力を使うことで、さらに光熱費を抑える効果が期待できます。また、冷媒としてフロンガスではなく二酸化炭素を使っているため、地球にやさしいメリットも。
初期コストは多少かかりますが、長い目で見てランニングコストを抑えられる点が魅力です。
賢くお金を使って、理想の省エネ住宅に
夏の暑さ、冬の寒さ・・・こうした自然現象を、設備の大量投入でねじ伏せるのではなく、逆に味方につけて利用するのがパッシブデザインです。このテクニックを随所に活かしながら、ピンポイントで効率よく省エネ設備を取り入れるのが、フィックスホームの提案する「健康・省エネ住宅」。
家づくりの予算には限りがあります。省エネ設備にコストをかけすぎれば、他でこだわりたかったところを諦めなくてはならなくなるかもしれません。賢くお金を使って、理想の省エネ住宅を手に入れましょう。