いい家づくりコラム

住宅の検査イメージ

欠陥住宅はこうしてできる!トラブル回避に役立つ裏事情

2017.9.19

一大決心をして手に入れた夢のマイホームが欠陥住宅だったら、あなたはどうしますか?
暑い、寒い、雨漏りがする、基礎にヒビが入っている、床が傾いている・・・そんな家では心も体も休まるどころか、ストレスで病気になってしまいます。

家族の健康と幸せのためには、絶対に避けたい欠陥住宅。ところが、重大な欠陥ほど目に見えにくく素人には分かりにくいうえ、建築業界には欠陥住宅を生みやすい裏事情もあるのです。
建売住宅・注文住宅問わず、建築業界の裏事情を知って、欠陥住宅をはじめとするトラブル回避に役立てていきましょう。


欠陥住宅とはどんなもの?

住んでみた感覚としてイメージした住み心地と違ったとしても、すべてが「欠陥住宅」というわけではありません。欠陥住宅と呼ばれるものは、大きく2種類に分類されます。

1. 法令違反の建築
2. 契約内容に違反した建築

つまり、国が定めた法令か、業者とあなたが交わした契約内容か、どちらかに違反している場合が欠陥住宅。住み心地に納得できなくても、違反がなければ欠陥住宅とはいえません。
欠陥住宅をめぐって施工業者と争いになった場合、これらの違反を立証できるかどうかが争点になります。

トラブルになりやすいのは、2の「契約内容に違反しているかどうか」の立証。1の法令はきちんとした基準があるため、それに照らし合わせてミスを証明することができますが、契約内容はあなたと業者の間で決定されているため、最終的な決定がどうだったかがはっきりしないと、違反を立証しにくいのです。

実際に問題になるケースで多いのは、雨漏り、隙間風、積雪被害、暑すぎる、寒すぎるなどの、外環境との分断に問題があるケース。そのほかに、騒音・異臭、プライバシーが守られていない、害獣・害虫の被害なども考えられます。


欠陥住宅ができる4つの原因

欠陥住宅がなくならない理由には、4つの建築業界の裏事情があります。欠陥住宅を避けるには、まずそれらを基礎知識として知っておくことが大切です。

原因1:コストの過剰な削減

商売の原則として、コストを抑えればそのぶん業者の手元に残る利益を増やすことができます。良心に欠ける悪徳業者の場合、このコストを過剰に削減し、最悪の場合手抜き工事をすることがあります。
たとえば必要な材料の量を減らしたり、粗悪品を使って材料費を安く済ませたり・・・。
ところが、そんな構造では本来必要な強度を出すことができず、家が傾いたり雨漏りするといった欠陥につながることがあるのです。

原因2:下請け・孫請けシステム

大手ハウスメーカーに依頼すれば絶対安心と考えるのは早計です。
なぜなら、依頼したのは大手ハウスメーカーでも、実際に家を建てるのは下請けの工務店だったり、さらにその下の孫請け業者だったりする場合が多いから。
大手ハウスメーカーは自社の利益を確保した残りの金額で、下請けの工務店に仕事を依頼します。下請けの工務店は、そこからさらに自社の利益を引き、残りの金額で孫請けに工事を依頼します。そうなると、実際に工事する職人さんに渡る報酬は、かなり目減りしていることが想像できます。
仕事ができる人ほど報酬は高いもの。安い金額で依頼できる職人さんは、腕もそれなりです。結果、でき上がる家の質もそれなりになってしまうことがあるのです。

原因3:行き過ぎた工期短縮

工期を短くすればするほど、人件費を減らし、重機や設備のレンタル費も節約することができます。経費を安く抑えようとして工期を急ぎすぎると、これもまた欠陥住宅の原因に。

たとえば、基礎などをつくるコンクリートの施工工程では、コンクリートを流し込んだ後、最低5日間は水をまくなどして急激な乾燥を防ぎ、振動を与えないよう静かに養生する期間が必要です。また、十分な強度が出るまでは型枠や支柱を外してはいけないことになっています。
ところが、工期短縮のために無理をして、まだ十分に強度が出ていないのに型枠を外したり、次の作業を始めてコンクリートに振動を加えてしまうと、大切な基礎にたわみやひび割れができる原因に。
強い家をつくるためには時間も必要です。引っ越し日などの関係で、無理に急がせる施主さんもありますが、行き過ぎた工期短縮は危険な家をつくるということを覚えておいてください。

原因4:失敗と隠蔽

家をつくるのは人である以上、ミスが起こることもあります。それでも、管理者や注文者にきちんと報告し、適切に対応策をとれば問題はありません。問題になるのは、現場でミスを隠蔽したり、誰にも報告せずその場しのぎで対応してしまったときです。
現場監督が10軒〜20軒もの現場を兼任しているなどで、現場にほとんどいない場合、そういったことが起こりがち。監督者が見ていなければ、ミスが起こったことを隠せてしまいます。やり直しによる損害や責任追及が発生することもありません。しかしその結果、できあがった家に重大な欠陥が背負わされることが数多くあるのです。


被害がもっとも多いのは建売一戸建て

欠陥住宅の被害を、カテゴリー別で見てみると、下記のようになっています。

1位 建売住宅・一戸建て
2位 分譲マンション
3位 注文住宅・一戸建て
4位 賃貸住宅
5位 賃貸マンション

特に多いのが1位と2位。これらの住宅はでき上がった状態で購入するため、躯体部分の工事状況を見ることができません。欠陥トラブルの多くは、基礎・躯体部分の不具合によるものなので、その部分を確認できない建売住宅や分譲マンションは、相対的に欠陥住宅の比率が高いのです。
いっぽう3位の注文住宅では、業者や設計士と十分に意思疎通ができず、結果として「契約内容に齟齬があった」ということになるトラブルが多いようです。


欠陥住宅の被害に遭わないためにできること

建売住宅を購入するときは、建売業者と利害関係のない検査会社に依頼し、欠陥など問題がないかを購入前にチェックしておくと安心です。このときのポイントは、建売業者と関係のない検査会社を選ぶこと。検査会社のなかには、建売業者と密接に結びついている会社も少なくないからです。

いっぽう注文住宅を建てる場合は、設計者や施工者とコミュニケーションを密にとっておくことが重要です。
工事を業者任せにせず、なるべく現場に足を運ぶ
工事状況が分かる写真をたくさん撮っておく
打ち合わせは文書に残し、コピーをもらっておく
ちょっとしたことだからと口頭で済ませてしまうと、後日「そんなつもりではなかった」「サービスの範囲内だと思った」といったトラブルに発展しがち。細かなことでも労をいとわず、議事録をつくって関係者のサインをとっておくのが正解です。

欠陥住宅が生まれる根本的な原因は、一部の業者の行き過ぎた営利主義。それに歯止めをかける十分なシステムが、日本の建築業界に整備されていないことも問題です。
一生で一番高い買い物と言われるマイホーム。欠陥住宅を選んでしまったら、その後の人生が狂わされかねません。被害に遭わないためには、家づくりを人任せにせず、主体的に関わることが何よりも大切です。