ZEHだけでは不十分?新しい省エネ住宅の種類をチェック
2018.10.25
いつかは建てたい夢のマイホーム。「省エネにはこだわって、しっかり光熱費を節約したい」とお考えの方は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、ゼッチ)やスマートハウスといった住宅用語を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「とりあえずZEHがいいよなあ・・・」と何となく考えているかもしれませんが、せっかくなら今後の動向を見据えて、省エネ住宅についての知識を深めておきたいですね。
今回のコラムでは、省エネ住宅やZEHの定義をおさらいしつつ、「スマートハウス」や「LCCM住宅」といった新しい省エネ住宅の概念についてもご紹介していきます。
一度建てたらその先何十年も、そこで暮らしを営むことになる「家」。現在の情勢だけでなく、10年先、20年先を見越した家づくりを意識して、長く満足できる家を考えていきましょう。
1. 省エネ住宅の定義
2. ZEH(ゼッチ)は高性能な省エネ住宅
3. スマートハウスはITを駆使した最新住宅
4. ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅についても知っておこう
5. 未来のスタンダードを見据えて計画を
省エネ住宅の定義
「省エネ住宅」と聞くと、従来の住宅よりもいくらか光熱費が節約できるといった程度のイメージしかないかもしれません。しかし省エネ住宅には、きちんと国によって定められた基準があります。これまでに何度か改正され、現在は2013年に改正された新基準が適用されています。
それによると戸建住宅では、住宅の一次エネルギー消費量(※1)、外皮の平均熱貫流率(※2)、冷房期の平均日射熱取得率(※3)が、定められた基準値を下回ることが、省エネ住宅の条件となっています。
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(※1)一次エネルギーとは
一次エネルギーとは、石油や天然ガス、太陽光などの自然界にもともと存在するエネルギーのこと。これを加工したものが二次エネルギーで、電気や都市ガス、ガソリンなどが挙げられます。住宅で使用するエネルギーは電気や都市ガスなど二次エネルギーが多いのですが、これを一次エネルギーに換算して、消費量から省エネ性能を評価します。
(※2)外皮の平均熱貫流率とは
外皮は、外壁や屋根、窓など住宅の外周部分のこと。平均熱貫流率は、そこから逃げる熱損失を計算したもので、UA値ともいいます。数値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネ性能が高いことを示します。
(※3)平均日射熱取得率とは
家のなかに日射熱がどのくらい入ってくるかを数値化したのが日射熱取得率。数値が小さいほど、日射熱が侵入しにくい住宅であることを表します。
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つまり、「省エネ住宅」を名乗るには、住宅の外皮の熱性能を高めるだけでなく、省エネルギータイプの給湯設備やエアコン等の機器を取り入れ、一次エネルギー消費量を抑える工夫もしていく必要があるのです。
ZEH(ゼッチ)は高性能な省エネ住宅
いっぽう、住宅展示場などでよく目にする「ZEH(ゼッチ)」は、住まいの年間一次エネルギー消費量が、プラスマイナスでおおむねゼロになる住まいのこと。
省エネ住宅の一種ですが、特徴は「創エネ」を組み合わせていること。高い断熱性能でエネルギーの損失を防ぎつつ、太陽光発電などでエネルギーを創り出すことで、エネルギー消費のプラスマイナスゼロを実現します。
現在日本では、経済産業省、環境省、国土交通省が連携して住宅のZEH化を促進しています。「2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」というのが国の目標です。
ZEH推進のために補助金も用意されており、さらに高性能なZEHプラスの要件を満たせば、補助金の額も高くなります。家を建てる前にぜひチェックしておきましょう。
>リンク:「ZEHに関する情報公開について(経済産業省 資源エネルギー庁ホームページ)」
スマートハウスはITを駆使した最新住宅
スマートハウスは直訳すると「賢い住宅」。家電や設備機器をインターネットにつなげ、ITを使って今までになかったさまざまなサービスが提供できるようにした住宅のことです。
たとえば太陽光発電でつくった電気を、使うのか、貯めるのかは、そのときの電気の使用量や天気などと関連して変動します。スマートハウスならそれらの情報を使って、冷暖房や給湯など家庭内のエネルギーを最適に制御することができます。
また、エネルギーの使用状況が見える化されるため、それぞれの家庭の生活スタイルに合わせて無理なく省エネすることにも役立ちます。
さらに言えば、スマートハウスの目的は省エネだけではありません。
外出先から玄関ドアに鍵をかけたり、家庭のエアコンを操作するなど、暮らしに便利な機能が多いことも特徴です。自動でシャッターを開閉して不在時も人がいるように演出できたりと、防犯上も効果が期待できます。
スマートハウスと省エネ住宅は同義語のように思っている人もいますが、それは正しくありません。正確にいえば、スマートハウスの技術で可能になることのひとつとして、省エネへの貢献があると考えてください。
現在は、個々の住宅だけでなく、まち単位でこうした取り組みを行なう「スマートタウン」も検証実験が進行中。IoT(Internet of things)などの最新技術を駆使しながら、エコで安全、快適に暮らせる次世代のまちづくりが模索されています。
ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅についても知っておこう
まだ耳慣れない言葉ですが、今後重要度を増してくる用語として、「ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅」についても知っておきましょう。
LCCM住宅とは、住宅建設時のCo2排出量も含め、ライフサイクル全体でのCo2収支をマイナスにする住宅のこと。省エネの精度を高めるだけでなく、家そのものの躯体や、建てるときの建築設備まで省エネを徹底することが必要になります。
LCCM住宅では、家庭で消費したエネルギーを上回る再生可能エネルギーを創り出す事も可能になります。国がZEHのもうひとつ先の目標として掲げているのが、このLCCM住宅なのです。
未来のスタンダードを見据えて計画を
省エネ住宅、ZEH、スマートハウス、LCCM住宅・・・。用語がたくさんあって混同してしまいがちですが、それぞれに細かい違いがあります。業者とのやりとりで混乱しないよう、正確な意味をしっかりととらえておきましょう。
2020年からは、すべての新築住宅が省エネ基準への適合を義務づけられます。2019年までは基準を満たしていなくても建てることができますが、その場合、住宅の資産価値に良い影響を与えないことは覚悟しておきましょう。
これから家を建てるなら、新基準を見据えてしっかりと基準を満たす省エネ住宅を建てることが大切です。
さらにいうならば、将来的にはその先にあるスマートハウスや、ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅がスタンダードになっていくことが予想されます。
これからマイホームを構想する際には、これらも頭の隅に意識しておくとなお良いでしょう。