省エネ住宅を効率的にプランニング。大切なのは優先順位
2018.10.10
「せっかくマイホームを建てるなら、冷房や暖房を使わなくても快適に過ごせる家にしたい」、多くの人がそう考えるのではないでしょうか。
しかし、漠然としたイメージだけで省エネ住宅をプランニングするのは禁物です。よくある失敗例としては、コストをかけた割に効果がイマイチだったり、高価な最新省エネ設備を揃えたために、他のところにコストをかけられなくなってしまうことがあります。
今回のコラムではそうした落とし穴にはまらないよう、客観的なデータに基づきながら、優先して省エネすべきポイントや、その方法を明らかにしていきます。
ぜひ、マイホームの省エネプランを考える際の参考にしていただき、エコで快適な暮らしを実現してください。
1. 家庭のエネルギー使用量、2大横綱は給湯&家電
2. 夏の暑さ対策は、エアコンの使用を組み入れて考える
3. 優先すべきは冬の寒さ対策
4. エコな家づくりに採りいれるべき「パッシブデザイン」
5. エネルギーを使うものから優先的に省エネを
家庭のエネルギー使用量、2大横綱は給湯&家電
統計によると、家庭でもっとも多くエネルギーを使用しているのは「給湯」。その次に、冷蔵庫やテレビといった「家電」が多くなっています。
意外なのは「エアコン」のエネルギー消費量。体感的には非常に多くのエネルギーを消費しているように思いますが、実際には冷蔵庫の半分程度で、それほど多くの量ではないことがわかります。
つまり、家庭で省エネを考えるときには、エアコンにかかるエネルギーにそれほど目くじらをたてる必要はなく、それよりもまず「給湯」に着目すべきだということがわかります。
グラフ出典:経済産業省 資源エネルギー庁ホームページ
夏の暑さ対策は、エアコンの使用を組み入れて考える
「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」――有名な徒然草の一節ですが、これが書かれたのは鎌倉時代の末期。この頃の日本人は、風通しの良い家に住み、風鈴や打ち水といった方法で涼を取っていました。
ところが21世紀を迎えた今は、この頃とは比べものにならないほど夏の暑さが厳しくなっています。そのような状況で自然通風だけに頼っていても、ただ湿った熱風が吹き込むだけで、涼を得ることは困難。
先に見たように、エアコンを使った冷房のエネルギー使用量はそれほど多くはありません。盛夏にはエアコンを使って室温を下げることも想定し、効率良く室内を冷やせる間取りなど、自然通風と組み合わせた家づくりのプランニングをすることが重要です。
優先すべきは冬の寒さ対策
さらに、夏の暑さよりも優先すべきなのが、冬の寒さ対策です。
人間は寒さにからきし弱い生き物。寒さを我慢することができない体の作りになっているため、家の中が寒いと、病気や事故につながることもわかっています。
2月の最低気温で比較してみると、日本の寒さはなんとフランスのパリ並み。この寒さにエアコンや石油ファンヒーター、ストーブといった暖房で対応しようとすれば、それだけでそうとうなエネルギーを消費してしまいます。
ですからエネルギーを節約できるエコな家づくりを目指すなら、夏ではなく「冬をむねとすべし」。熱を逃がさず、隙間風を入れないよう、断熱性・気密性の高さにはこだわりたいところです。
エコな家づくりに採りいれるべき「パッシブデザイン」
以上から、省エネを考えた家づくりでは
1.給湯
2.照明や家電
3.暖房
この優先順位に従って、使用するエネルギーを減らすことが効果的であることがわかりました。
1の給湯に用いるエネルギーを減らすには、エコタイプのガス給湯器や電気給湯器など、いろいろな選択肢があります。
なかでも今注目したいのは、太陽熱利用の給湯システム。太陽の熱を使ってお湯を作ることで燃料の使用量を削減できるというもので、熱変換率の高さが特長です。わりと古くからある方法ということもあり見落とされがちですが、かつてと比べて使いやすさも向上しており、検討する価値はじゅうぶんにあります。
2、3の照明や暖房に用いるエネルギーを減らすには、自然エネルギーを活用した家づくり=「パッシブデザイン」が効果的。パッシブデザインを採り入れた住宅では、昼間は太陽の光で明るく過ごせるので、照明エネルギーを 2〜10%程度削減できるといわれています。
>リンク:「パッシブデザインの設計ルール(1)太陽を味方につける窓」
>リンク:「パッシブデザインの設計ルール(2)間取りの重要ポイント」
エネルギーを使うものから優先的に省エネを
夏をエアコンなしで涼しく過ごそうとすると、現代の日本の気候ではどうしてもムリが生じます。基本的にはパッシブデザインを活用しながら、暑さの厳しい季節にはエアコンの使用も視野に入れ、プランニングをしていきましょう。
省エネ設備は投入すべきポイントを絞り、エネルギーを多く使うものから優先的に検討すれば、それほど予算をかけなくてもじゅうぶん省エネが実現できます。
省エネばかりに予算をかけすぎて、マイホームで実現したかったことができなかった・・・そんな残念なことにならないよう、効率よいプランニングでエコな家づくりをかなえましょう。