いい家づくりコラム

家の寿命を延ばし長持ちさせる、建物の通気・換気とは

2022年2月20日

健やかで快適な暮らしのために、「換気」の重要性について11月、12月と2回に渡ってご紹介してきました。とくに、11月コラムの「実は危険な空気の汚れ!上手な換気で健やかな暮らしを」では、空気の汚れがいかに人体にとって悪い影響を与えるかについて述べましたが、そのなかで、換気不足による結露の発生とカビ・ダニの繁殖が住まいそのものの寿命を縮めてしまうことについてもふれました。

そこで今回、大切な資産である住まいを守るために、“建物の健康寿命”にスポットをあてた「換気」と「通気」のお話をお届け。劣化の原因となる結露やカビ、腐食、シロアリなどの大敵を寄せ付けない健康で長持ちする住まいとはどんな家なのかを知り、より良い住まいづくりのヒントとして役立てていきましょう。


住まいの天敵は結露。長生きの秘訣は湿気対策にあり!

皆さんは日本の住宅の平均寿命がどれぐらいの長さかご存じでしょうか?国土交通省が発表したデータによると、日本の平均住宅寿命は30年。イギリスの77年、アメリカの55年と比べてとても短く、“次世代に住み継ぐ”どころか一世代すら持たない短命ぶりなのです。(※取り壊される住宅の平均経過年数の数値/国土交通省「長持ち住宅の手引き」より)
結露イメージ

その背景には、ライフスタイルの違いや価値観の違いなどさまざまな要因が考えられますが、最も大きな原因が温暖湿潤な気候にあると考えられています。日本の住宅の多くは木造建築であり、湿気が多い日本の気候は木材が腐りやすい環境だと言えます。しかも、近年の住宅は高気密・高断熱化が進み、通気が良くないと結露が発生してしまいます。この結露こそが木造住宅の天敵で、長期間水分にさらされることで木材が腐ってシロアリの発生につながり、建物の寿命を縮めてしまうのです。

とくに、目に見えない部分に起こる結露は手入れができないままに住宅を傷め、家の耐久性・耐震性低下に大きく直結。木造だけでなく鉄骨造やコンクリート造の住まいも同様で、長期間にわたる結露はサビの発生、塗装の劣化を招き、漏水の原因になることも。

こうしたさまざまなリスクを生み出すことから、結露は「家の病気」とも言われています。住まいを守り寿命を延ばすためには、結露を発生させないための湿気対策が重要になってくるのです。


大切なのは見えない部分!建物の“外皮”の通気と換気

結露をなくしカビやダニの発生を防ぐためには、窓を開けたり換気扇を作動させて、室内をしっかり換気することが大切……というのは、これまでのコラムでも述べたところ。しかし、住宅の寿命をのばすために必要なのは、「見えない部分」への対策。つまり、屋根裏や床下、壁など住宅の“外周”、建築用語で「外皮」と呼ばれている部分を換気・通気することです。

外皮の通気・換気を行う本来の目的は、建物構造内に浸入した水分を外に出し、劣化を防ぐこと。外皮の部分には、室内からは水蒸気が、外部からは雨水などが入り込むため、それら水分を内部に湿気を滞留させないようにして、つねに木材乾燥させ住まいを劣化から守るというとても大きな役割を担っています。

そんな外皮の通気・換気のポイントとなる箇所は、大きく3つ。「小屋裏」「壁の中」「基礎・床下」です。暑さや寒さなど厳しい外部環境と居住スペースの緩衝役となる「小屋裏」、空気の通り道となる「壁の中」、木材を乾燥した状態に保つ「基礎・床下」と、それぞれに住まいを快適にするための機能を果たしており、ここでの換気や通気が阻害させてしまうとその機能が果たせなくなるだけでなく、さまざまな不具合を発生させてしまいます。そのため、小屋裏や基礎内の大きな空間の空気を入れ替える「換気」と、屋根や壁や床のなかに空気の流れをつくりだす「通気」が、住まいの健康のためには必要不可欠なのです。

では次に、これら換気・通気が必要な3つのポイントについて、順にみていきましょう。


ポイント① 基礎・床下

家が建つ地面には大量の湿気が蓄えられているほか、基礎のコンクリートからも多くの湿気が発生し、床下空間はまさに湿気の温床。木材は高い吸放湿性を持っているため、床下に溜まった水分を土台や柱が吸い込んでしまい、より高湿な状況を作り出すという悪循環に陥ってしまいます。そうすると湿度の高い環境を好むカビや木を腐らせる腐朽菌(ふきゅうきん)が繁殖し、住まいの天敵・シロアリにとって最適な環境が出来上がってしまうというわけです。いったんシロアリが木材を食い荒らしはじめると、家を支える土台や柱はボロボロに。そうならないためにも、基礎・床下部分の換気はとても重要といえるでしょう。

カビや腐朽菌が繁殖するには、温度・酸素・水分・栄養分の4つの条件が揃うこと。つまり、これらを揃えないことが有効な対策となるということです。温度と酸素のコントロールは床下では難しいですが、栄養分を絶つという意味では防腐剤の処理は有効な手段。もっとも重要なのが、水分を制御するための換気です。シロアリについても、換気によって木材を乾させておけば、生息を防ぐことが可能になります。


ポイント② 壁の中

現代の住宅の外壁はサイディングやガルバリウムなどが主流で、昔の日本家屋のように構造体の木が外に面していない建物がほとんどです。これらサイディングは構造体を守り、美しいデザインをつくりだしてくれる一方で壁の中の湿気を放出する性能が低いため、湿気対策の工夫ができていないと壁の内側に結露を発生させる要因に。万が一、雨水が入ってしまうと、木材や断熱材を濡らし劣化を招いてしまいます。

そこで必要になってくるのが、サイディングの裏側の外部に一番近いところに、空気の通り道となる空間「壁通気層」をつくること。それによって、壁への湿気をその場で留まらせることなく外へ排出させ、壁内の乾燥状態を維持。木材の健康と本来の性能をしっかりと発揮できる、より良い環境を保つことができるのです。


ポイント③ 小屋裏

小屋裏とは、屋根と天井の間に出来る空間のことであり、外気から居住空間を守り、快適な暮らしをつくる場として重要な機能を持っています。それだけに、太陽による熱や冬の寒さは影響をダイレクトに受け、夏は酷暑で高湿度、冬は極寒の厳しい環境に。また、屋根面は常に厳しい気候に晒されていて、雨水が侵入してしまう可能性も少なくありません。さらに、生活で生まれた湿気は上方に移動して小屋裏の中にこもるため、ここでの湿気対策が家の健康状態を左右すると言っても良いでしょう。

また、小屋裏の湿気対策については、屋根の断熱方法によって「換気」なのか「通気」なのか、方法が異なるため注意が必要です。

〈屋根断熱の場合〉

屋根断熱とは、屋根の厚さの中に断熱材を入れる断熱方法。屋根の厚みの外側が外気温、内側が内気温となるため、小屋裏空間は自ずと内気温になり「室内あつかい」となります。屋根の厚みの中にこもる湿気や雨水の浸入による水分を排出するため、壁の中と同様、空気層を設けることが必要ですが、室内あつかいとなる小屋裏空間には、特に通気や換気の必要はありません。

〈天井断熱の場合〉

天井断熱とは、最上階の天井面の上に断熱材を敷く方法。天井から上が外気温となり、下が内気温となります。天井の上にある小屋裏空間は「室外あつかい」となり、太陽熱や冷気の影響をダイレクトに受ける過酷な空間に。小屋にこもる湿気と急激な温度差により結露が発生しやすい環境になるため、小屋裏全体を換気する必要があります。換気棟の設置や軒裏天井へのガラリ(通気口)設置などさまざまな方法があるので、新築やリフォームの際に、ぜひプロに相談してみてください。


高気密・高断熱住宅にこそ、換気・通気は必要不可欠

一年を通じて室内環境を心地よく保つために、高気密・高断熱化が進む日本の住宅。それに伴って発生する空気の汚れや結露などのリスクから住まう人を守るため、24時間換気システムなど室内の空気を適切に換気する仕組みは、もはや当たり前の時代になりました。しかし、室内の換気が法律で義務化されている一方、建物を守るための外皮の換気・通気には法的義務はなく、住み始めてから結露の問題に気づく……といった残念な事態に陥る人も少なくないのです。

住まいは家族の命や健康を守る大切な場であると同時に、長く大切に住み継いで次世代へとつなげていきたい大切な財産。だからこそ、心地よく快適に暮らせる住空間を追求すると同じぐらい、建物が健康に過ごせるよう換気・通気についても考えていきたいですね。新築やリノベーション、あるいは住宅をご購入の際には、しっかりと換気と通気対策を行って、住まいの寿命を延ばしていきましょう。


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