いい家づくりコラム

床下エアコン設置例

床下エアコンをすすめる本当の理由と失敗しないコツ

2022.12.20

「足元から暖かさを感じられて、節電にもなる」と注目されている床下エアコンですが、床下エアコンをおすすめしたい本当の理由は別のところにあります。つまり、それが床下エアコン最大のメリットというわけです。しかし「期待していたほど暖かさを感じられなかった」など、床下エアコンには失敗談も少なくありません。

本コラムでは、床下エアコンの最大のメリットや床下エアコンを失敗しないコツなどを詳しくお伝えします。本コラムの要点を押さえておけば、床下エアコンの能力を最大限に活かせる家づくりができますので、床下エアコンをご検討中の方はぜひご一読ください。


そもそも床下エアコンは本当に暖かいの?床下エアコンの原理

ずばり、床下エアコンは暖かいです。冬場に床が冷たいと足元が冷えて余計に寒く感じますが、床下エアコンはその名の通り床下の空間に暖気を通しているため床自体もほんのり暖かくなり、足元から暖かさを実感できます。そして「暖気は上昇する」という性質により、各部屋の床に設けたスリット(通気口)から室内に暖気が入り込み、部屋を暖めます。

脱衣所やトイレにもスリットを設けるため、特定の部屋だけではなく家全体を効率的に暖めることができます。


床下エアコンは新築時の施工が基本

床下エアコンが能力を最大限に発揮するには、綿密な計画と施工が必要です。そのため、新築時の施工が大前提で、リフォームであとから床下エアコンを取り付けることはおすすめできません。その理由を詳しくご説明します。


布基礎とベタ基礎

昔ながらの基礎では床下エアコンを施工できない

いま主流となっている基礎は「ベタ基礎」と言い、地表をコンクリートで完全に覆うタイプのものです。コンクリートは熱容量が高く、エネルギーをため込む力が強いため蓄熱されます。そのため、電気代が安い深夜に床下エアコンを稼働させておいて昼間にスイッチを切ったとしても、貯まった熱がじわじわと長時間にわたり家を暖めてくれます。

一方、昔ながらの「布基礎」は、基礎のすきまに地表が露出したままの状態です。床下エアコンでいくら床下を暖めても地面に熱が奪われてしまうため、布基礎の場合は床下エアコンを施工しても意味がありません。


床下エアコンの有無で断熱材の入れ方も違う

断熱工法には大きく2種類あり、基礎の立ち上がりに断熱材を施工する「基礎断熱」と床下に断熱材を施工する「床下断熱」があります。

床下エアコンを施工する場合は、コンクリートの蓄熱性を利用するため基礎断熱が採用されます。多くの家は床下断熱で建てられており床下からの熱が遮られてしまうため、「足元から暖かい」という床下エアコンのメリットを十分に感じられないでしょう。


暖かい、節電だけじゃない!床下エアコンが命を守る

床下エアコンの家全体を暖められるという利点は、命を守ることにもつながります。これが冒頭でお話した、床下エアコンをおすすめする本当の理由です。

寒暖差による血圧の急激な変化に体が対応しきれずに起こるヒートショック。浴室やトイレで発症することが多く、軽度の場合はめまいで済みますが、重度の場合は意識喪失や心臓発作、脳卒中などを引き起こし命にかかわります。

2011年にヒートショックに関連して入浴中に死亡した人は全国で約17,000人、そのうち14,000人が高齢者です(東京都健康長寿医療センター研究所の調査)。2021年の交通事故死者数は2,636人のため、17,000人という数がどれほど大きいかおわかりいただけると思います。

ヒートショックに注意が必要なのは高齢者に限らず、どの世代も甘くみてはいけません。高齢者と比較して体が丈夫である若い世代でも、実際にヒートショックによる事故で亡くなる方もいるのです。

床下エアコンは脱衣所やトイレはもちろん家全体を暖めることができるため、家の中で寒暖差が激しい場所はなくなります。自分や家族の健康、命を守ることができる点は、床下エアコンの最大のメリットといえるでしょう。

しかし、床下エアコンが最大限に能力を発揮できるのは、綿密な計画と施工があってこそ。続いては、床下エアコンを失敗しないコツについてお話します。


失敗パターンから学ぶ、床下エアコンを失敗しないコツ

床下エアコンを失敗しないコツは、床下エアコンの施工経験が豊富なプロのもとで計画することです。
失敗パターンからその理由を説明します。

失敗パターン①床下断熱を施してしまう

まれな失敗例ではありますが、起こりうるのが床下断熱です。床下断熱の場合、せっかく床下エアコンを施工しても床下から熱が伝わりません。足元から暖かさを体感できないため、床下エアコンの効果を感じにくくなります。

失敗パターン②暖気の回り方を考えていない

床下エアコンは計画性あってこその設備です。床下エアコンを設置する場所はどこが最適なのか。床下で風の通り道となる人通口(じんつうこう/基礎の開口部)も、暖気の流れを計算して最適な場所、数を設ける必要があります。人通口は数が多ければよいわけではなく、余計に増やすことで強度不足になる可能性があります。「暖かいけど地震に弱い家」ではまったくシャレになりません。

そのため人通口を補強したり、立ち上がりの代替として地中梁(ちちゅうばり)を採用するなど、トータルに暖気の回り方を計画する必要があります。


暖気の回り方を計画

床下エアコンは経験値の高いプロと、計画的に!

床下エアコンは「見よう見まね」で施工してうまくいくものではありません。だからこそ経験値の高い、計算根拠を出せるプロの力が必要です。断熱工法や基礎の補強、暖気の回り方などを総合的に考えて施工された床下エアコンは、生活の中でその効果を十分に感じさせてくれるでしょう。