「空気がキレイな家」って?数値でみる空気のキレイ
2022.11.20
空気のキレイな家で過ごしたい。コロナ禍以降、そのように考える機会も増えたのではないでしょうか。空気をキレイに保つために家でできる代表的な対策は、空気清浄機の使用です。空気清浄機はPM2.5やハウスダストなどの微細な物質を除去してくれますが、実はそれだけでは不十分。加えて、空気清浄機は空気がキレイになったかどうかを具体的な数値で示してはくれません。
私たちが目を向けるべきものは、とても身近な気体でした。それは手軽にモニタリング可能で、空気のキレイ度を数値で知ることができます。
今回のコラムでは、その気体が私たちに与える具体的な影響や対策についてお伝えします。家が完成して住み始めた今からでも、すぐに実践できる簡単な方法のため、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
1. 空気のキレイ度はCO₂濃度で可視化できる
2.CO₂濃度があがるとどうなる?1,000ppmが換気の基準
3. 空気をキレイに保つには、換気が有効
4. 命の危険はなくとも、CO₂濃度の上昇はデメリット大!
5. CO₂濃度のモニタリングから始めてみよう
空気のキレイ度はCO₂濃度で可視化できる
私たち人は、1分間に12~20回の呼吸をおこない、1日の呼吸数は2万回にもおよびます。1回に吸う空気の量は500ml、1日で500mlのペットボトル2万本分の空気を吸っていることになります。
空気中にはPM2.5やハウスダストなどのさまざまな物質が漂っていますが、なかでも「二酸化炭素(CO₂)濃度」は空気のキレイ度をはかる1つの指標となります。
CO₂濃度とは、1m³中に二酸化炭素がどれくらい含まれているかを示したもので、ppm(parts per million=100万分率)という単位で表されます。
※ppmは、%(100分率)と同じような使い方をします。1ppmは100万分の1であり、換気が必要となる基準1,000ppmは0.1%です。
CO₂濃度は、CO₂モニターという機械で簡単に計測することができます。温度や湿度も同時に計測でき、家庭用のものであれば5千円~1万円で購入可能です。高額な空気清浄機を購入する前に、まずはCO₂モニターで家のCO₂濃度を知るところから始めてみましょう。
CO₂濃度があがるとどうなる?1,000ppmが換気の基準
では、CO₂濃度があがると私たちにどのような影響があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
350~450ppm(0.035~0.045%)
屋外のCO₂濃度で、空気がキレイな状態です。快適に過ごすことができます。
450~700ppm(0.045~0.07%)
屋外ほどCO₂濃度は低くありませんが、全く問題のないレベルです。
700~1000ppm(0.07~0.1%)
空気が汚れ始めており、やや注意が必要です。1,000ppmは換気をおこなう基準となります。室内で2~3人で会話していると、ほどなくして1,000ppmに達します。感染症発生リスクを下げるためには1,000ppm以下であることが望ましいです。
1,000~2,500ppm(0.1~0.25%)
少しずつ体調に異変が生じはじめる濃度です。不快感や集中力の低下、眠気、倦怠感などの症状が現れます。30分に1回程度の換気が推奨されます。
2,500~5,000ppm(0.25~0.5%)
体に悪影響が出はじめ、息苦しさや頭痛、めまいなどの症状が軽度に現れます。
閉め切った車内や大混雑した電車内は4000ppm程度といわれ、室内で灯油ファンヒーターを使用した場合は稼働後30分で5,000ppm程度に達します。
すぐに窓を全開にして換気する必要がある状態であり、CO₂濃度が十分に低下するまで部屋の使用を控えましょう。
5,000ppm(0.5%)以上は強い中毒症状が出現
10,000ppm(1%)~:心拍数が増加し、頭痛やめまいなどの症状が激しくなります。
30,000ppm(3%)~:呼吸困難やけいれんなどの症状がでます。
80,000ppm(8%)~:意識を失い、数分で死亡する恐れがあります。
200,000ppm(20%)~:数秒で死亡します。
二酸化炭素消火設備が作動するなどの特殊な状況を除いて、日常生活で命が危険になるほどCO₂濃度が上昇する可能性は極めて低いため、ご安心ください。
空気をキレイに保つには、換気が有効
CO₂濃度を低く保つための有効な対策は、単純ですが、換気によって空気を入れ替えることです。換気の方法は「窓を開ける」「エアコンを利用する」「家の換気システムを利用する」など、そのときの状況に合う方法でかまいません。最も手っ取り早い方法は、複数の窓を開けての換気です。数分で室内の空気が入れ替わるため効率的です。
また、空気がキレイな家をイメージしたとき「自然素材の家」を思い浮かべる方もいるでしょう。確かに、無垢材や漆喰、珪藻土などの自然素材でつくられた家は、建築材料に含まれる化学物質などによる人体へのリスクや、においを軽減することができます。木材などの自然素材は多少のCO₂も吸着しますが、大きな効果はないでしょう。
命の危険はなくとも、CO₂濃度の上昇はデメリット大!
日常生活レベルではCO₂濃度があがっても命の危険はありませんが、先述のように眠気や集中力の低下などの症状がでる可能性は大いにあります。それはつまり、作業効率がおちるということ。アメリカの国立大学がおこなった研究では「2,500ppmを超えると思考能力などが大幅に低下する」と報告されています。
仕事中に眠気がしたり、なぜか集中できなかったり。そんなときは、室内のCO₂濃度が高い状態なのかもしれません。また、マスク着用時に息苦しさを感じるときも同様で、通気性が悪くマスク内のCO₂濃度が高くなることが原因です。1,000ppm以上は感染症発生リスクも高まります。
CO₂濃度の高い場所で過ごすデメリットは大きいため、積極的に換気をおこないましょう。
CO₂濃度のモニタリングから始めてみよう
室内のCO₂濃度を低く保つことは、空気がキレイになるということだけでなく、快適な環境の維持や感染症予防、さらには作業効率の低下を防ぐという大きなメリットもあるのです。
今後はぜひ、生活のなかで意識的に換気をおこなってみてください。まずはCO₂モニターで数値をモニタリングすることから始めてみてはいかがでしょうか。