注文住宅の契約書はココを見よう!チェックポイント解説
2021.2.17
住宅の間取りや仕様が決まり、重要事項説明書に納得できたら、いよいよ契約を交わします。このときに重要なのが、契約書をしっかり確認することです。契約書には、約款や設計図、仕様書などたくさんの書類がまとめられていて、細かい字で難しい専門用語が並べられています。ついつい「読むのが面倒」と思ってしまいますね。でも、契約書をしっかり読まず安易に契約すると、後々トラブルになることも。この面倒な作業を乗り越えてこそ、楽しいマイホームライフが待っています。
そこで、契約書を読むポイントをご紹介します。最初は分からなくて当然。今回は、契約書を正しく読み解く力をつけましょう。
契約書には何が書かれているの?
家を建てるときに交わすのは、建築工事を依頼するための「建設工事請負契約」です。契約書は、一般的に次の4種類の書類が1セットになっています。
①工事請負契約書
施主、施工会社、工事の場所や期間、費用のほか、支払い方法や回数といった基本的な情報が書かれています。ここに、施主と施工会社の双方が署名、捺印をします。
②工事請負契約約款
工事中に災害が発生した場合や設計図通りに施工されなかった場合、予定が変更になった場合などの責任負担や違約金、契約解除条件、瑕疵担保責任などについて記載されています。瑕疵担保責任とは、契約後に瑕疵(不具合)が見つかった場合の保証のこと。新築の場合、主要構造部分には10年間の保証が義務付けられています。
③設計図
図面には、特記仕様書、設計概要書、仕上表、配置図、平面図、立面図、断面図、平面詳細図、矩計図、部分詳細図、構造図、設備図などがあります。これらには、間取りや、使用する設備、部材などが一つひとつ記載されています。
④見積書
工事費の内訳明細が記されています。
契約書の読み方とチェックすべきポイント
契約書が正しいかどうかをチェックするには、書かれている内容を読み解かなければいけません。チェックするポイントを抑えて、正しく判断しましょう。
建設工事請負契約のチェックポイント
・工事名・工事場所
契約書の工事名には「〇〇様邸新築工事」というように表記されています。工事場所は、登記簿と照らし合わせ、住所に間違いがないかを確認します。
・金額
オプションまで含まれた総額をチェックします。なかには、本体価格だけを記載して後からオプションを請求する会社もあるので注意が必要です。また、見積書と照らし合わせて、総額が一致しているか確認を。かかる消費税額も大きいため、消費税額も計算して間違いがないかを確認しましょう。
・支払い日と支払いのタイミング
支払いは、契約時に10%、着工時に30%、上棟時に30%、引き渡し時に30%というように、3〜4回に分けるのが一般的です。住宅ローンの契約時期に関わる重要な事項です。間違いがないかを確認し、いつ、いくら必要になるか考えておきましょう。
・工期
工事が始まる着工日、建物が完成する完成日、住宅が施主の手に渡る引き渡し日などが記載されています。この日に合わせて引越しの日取り決めや電気や水道などの開通手続きをしないといけないので、お互いの認識がずれていると予定が全て狂ってしまいます。「未定」や「要相談」といった曖昧な表現ではなく、正しい日付が書かれていることをチェックしましょう。
見積書のチェックポイント
明細をすみずみまで確認し、不明な金額があれば遠慮せずに聞きましょう。見積書の合計金額は、工事請負契約書の金額と一致していなければいけません。
仕様書のチェックポイント
キッチンやお風呂などの設備、壁や床の部材、仕上げの方法や材料などのすべてがこの仕様書に書かれています。打ち合わせで決まった通りの内容になっているか確認しましょう。「~一式」と書かれている場合は一つひとつその場で確認をして、見積もりに明記してもらいましょう。
約款のチェックポイント
・損害があった場合の補償
工事が中止または変更になったり、工事によって第三者を負傷させた場合、自然災害などによって損害が発生した際には、誰がどのように責任を負うのか、またどのような補償をするのかを確認します。一般的には、自然災害の場合は施主が損害を負担することが多いですが、第三者を負傷させた場合は施工業者が責任を負います。こうした細かな内容も明確に文章として記載しておくことが大切です。
・契約解除する場合の条件
契約を締結した翌日から契約解除の違約金が発生します。解除条件や違約金の金額などは事業者に有利に書かれていることが多いものです。不利益になることがないように、「おかしい」と思ったら質問しましょう。
・損害遅延金
損害遅延金とは、工期に遅れが出た場合の損害を補償する違約金です。金額や補償される期間をチェックしましょう。契約書に項目がない場合も損害額の請求は可能ですが、責任の所在や金額を巡ってトラブルになるリスクが高いため、明確に記載してもらうことが大切です。
・アフターサービス
注文住宅の場合は10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。保証の内容と範囲を確認しましょう。
契約書によくあるトラブル
重要な事柄を見落としてしまったり、契約を焦ってしまったばかりに、後になってトラブルになることも。その一例をご紹介します。
遅延損害金の金額で争いに
工期がずれてしまい、引き渡し日が遅れたことで入居日が延期に。引越しや家具の配送などさまざまな手続きがいったん中止になり、キャンセル料や追加の賃貸料が発生してしまった。施工会社に遅延損害金を請求したが、契約書に明確な取り決めがなかったため、その金額を巡って工務店と折り合いがつかなかった。
建築プランが確定する前に契約してしまった
本来であれば、プランの決定後、プランに沿って図面や見積書が作成されるところを、簡単な一般図作成の段階で工事請負契約を締結し、その後に詳細なプランを決定する「先行請負契約形式」で契約した。しかし、詳細な打ち合わせが進むにつれて想定外の追加費用が発生することが分かり、予算がオーバーしてしまった。
住宅ローンが通らず契約解除で多額の違約金が発生した
ローンの審査に落ちてしまって支払いができなくなってしまった。契約書に、ローンが通らなかった場合に違約金なしで解除できる「融資利用の特約=ローン特約」が付帯されていなかったため、多額の違約金を払うことになってしまった。
仕上がりが打ち合わせしていた内容と違った
簡単な図面しかもらっていない状態で契約をした。「口頭で伝えているから大丈夫」と信頼していたら、希望とは違った仕上がりに。補償してもらおうとしたら、施工会社に「設計書に書かれていないから工事の問題はない」と言われてしまった。
分からないことはどんどん質問しよう
契約後になってトラブルが起こっても「分からないままに契約した」という言い訳は通用しません。理解できない内容は、恥ずかしがらず面倒がらず、どんどん担当者に質問しましょう。営業マンから強く契約をすすめられても焦らず、自分のペースを貫きましょう。
契約書は項目が多いため、その場で隅々まで確認するのは難しいもの。事前に複写したものをもらって内容を確認し、疑問点を洗い出しておくことをおすすめします。
信頼できる業者でも任せきりはNG。あなた自身が本気で契約に向き合うことが大切です。契約締結を乗り越えて、夢のマイホームを実現しましょう。