実は危険な空気の汚れ!上手な換気で健やかな暮らしを
2021.11.20
夏は涼しく冬は暖かに、冷暖房によって室温を心地よい温度に保つと、ついつい換気をするのが億劫になってしまいますね。でも、家の中の空気は、生活しているだけでどんどん汚れていることをご存じですか?
人やペットの呼気はもちろん、料理や入浴といった日常の生活動作によって湿気や二酸化炭素、臭いなどに空気が汚染されるだけでなく、パソコンや家電、洗剤や除菌剤、防虫剤などなど、家に持ち込まれるものでも空気が汚染さてれいき、それらの「汚れ」が滞留すると、シックハウス症候群などの深刻な健康被害を引き起こす場合も。そこで重要になってくるのが換気です。
最近では新型コロナウイルス感染症予防の目的から換気の重要性が見直されており、特に空気が乾燥している冬場はウイルス性の感染症が流行しやすく、「感染症予防の一つとして室内の換気が必要」と言われています。今回は毎日を健やかに安心して暮らすために、住まいの換気について考えていきましょう。
1. 空気を汚す汚染物質と、換気の義務化
2. 空気の汚れが人体と家に与える影響
3. 換気の種類と、正しいやり方を知ろう
4. 季節にあわせた自然換気も効果的に
5. 換気を考えた、健康に暮らせる家づくりを
空気を汚す汚染物質と、換気の義務化
空気を汚す汚染物質は、人が呼吸するだけで吐き出される二酸化炭素をはじめ、ガスや石油ストーブなどの暖房器具による一酸化炭素、建材や家庭用品から発生するホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)などの化学物質、チリやダニ、カビ菌などのハウスダウスト、そして、外気が運んでくるウイルスやPM2.5、花粉など、その種類はさまざま。普段何気なく生活するだけ、数多くの汚染物質にさらされているのです。
木や土などの天然素材で作られた昔の日本家屋であれば、通気性が良く家そのものが呼吸していたため、空調効率は悪い反面、いつも新鮮な空気のなかで生活できていたといえます。しかし、住宅建築や建材の進化によって住まいは高気密・高断熱になり、空調効率が格段にアップすることで一年を通して快適環境を実現。そのかわりに汚染物質がなかなか排出されず、汚れた空気や湿気が家のなかに溜まりやすくなってしまったのです。
とくに有害な化学物質がもたらすシックハウス症候群の健康被害は深刻で、それを防ぐための対策として2003年7月1日、国土交通省は建築基準法の改正を施行。24時間換気システムの設置が義務付けられ、住まいづくりにおいても、住宅全体を考えた「計画的な換気」が必要不可欠になりました。
空気の汚れが人体と家に与える影響
人体への影響
●二酸化炭素・一酸化炭素
空気中の二酸化炭素濃度といえば最近ではコロナ対策のひとつとして注目を集めていますが、濃度が高くなると息苦しさや頭痛を引き起こす原因に。二酸化炭素濃度が一定値を超えると、子供たちの集中力にも影響を及ぼします。また、ガスや石油ストーブなどの暖房器具による一酸化炭素は中毒を招く危険もあります。
●化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど)
建材などに含まれる有害な化学物質は、吐き気や頭痛、目・鼻・のどの痛みなど、シックハウス症候群の発症につながります。
●ハウスダスト
ホコリやダニ、カビは、アトピー性皮膚炎、鼻炎、気管支喘息といったアレルギー疾患の引き金に。小児喘息の主な原因のひとつと言われています。
●花粉や細菌、ウイルス
言うまでもなく、花粉や細菌、ウイルスは人体にとって大敵。毎年、花粉症やインフルエンザに苦しめられている人が多いのはもちろん、近年では新型コロナウイルスの感染リスクも大きな問題になっています。
●異臭
キッチンやトイレの臭いはもちろん、ペットやタバコの煙など、住まいはいわゆる“生活臭”でいっぱい。悪臭によって気分が悪くなり、ストレスの原因になります。
住まいへの影響
●結露の発生
室内で発生した水蒸気が溜まると結露になり、カビやダニの繁殖につながります。人体に悪いだけでなく、柱を腐らせたり構造体を痛めることで耐久性の劣化を招き、住まいの寿命を縮めてしまいます。
換気の種類と、正しいやり方を知ろう
汚染物質が人や家に及ぼす影響は、想像以上に深刻です。だからこそ、換気についてきちんとした知識を持っておくことが大切です。
実は、換気システムの換気形式には、次のように大きく3つのタイプがあります。
第1種換気方式/給気・排気とも機械換気で強制的に行う
第2種換気方式/給気は機械換気で行い、排気は排気口から自然に行う
第3種換気方式/排気は機械換気で強制的に行い、給気は給気口などから自然に行う
今までは低コストで計画換気が可能な「第3種換気」が主流でしたが、自然給気では花粉や2.5PMなどの外気の汚れも取りこんでしまうため、室内の空気はキレイにするには不十分。「第2種換気方式」も気密性が低い場合は室内に結露が発生する恐れも。これからは給気・排気ともに機械で行う、最も確実な「第1種換気方式」が主流となるでしょう。
今のお住まいで換気をするには、まず、設置されている24時間換気システムを「正しく」使うことが大切です。2003年7月以降に建てられたマンションや住宅であれば、換気をする仕組み(換気口・24時間換気システム)がついており、お風呂やトイレ、洗面所などの換気扇を使うと換気口から部屋の中の汚れた空気が建物の外に出され、同時に建物の外から新しい空気を取り込むよう設計されています。ですから、「暖房や冷房で快適になった空気を逃がしたくない」と換気口を閉じてしまったり、換気システムのスイッチをオフにしてしまうと、せっかくのシステムがもったいないことに。コントロールスイッチの電源は、ずっと「オン」にしておき、24時間換気ができる状態を整えましょう。
そのうえで、こまめに窓を開けて空気の入れ換えをするのも効果的です。窓で自然換気する際には一箇所だけ窓を開けるのではなく、空気の通り道を作れるよう2箇所の窓を開けること。2箇所の窓が対角線上にあると新鮮な空気が部屋全体に行き届き、さらに効果がアップします。窓がない、あるいは一箇所しかない場合は、扇風機やサーキュレーターを活用して空気の流れをつくると良いでしょう。
季節にあわせた自然換気も効果的に
とはいえ、冬は寒さが、夏は暑さが気になって、ついつい換気を怠りがち。また、換気を行うことでせっかくの冷暖房の効率が悪くなることも事実です。そこで、季節に合わせた換気を行って、一年を通して健康かつ快適に暮らしましょう。
●冬場の換気
室温が低い冬場は、まず暖房を入れてある程度部屋を暖めてから換気を行うのがおすすめ。暖かい空気は冷たいほうへ逃げようとするので、冬場は小さく窓を開けるだけでも十分に空気が流れます。エアコンから出た暖かい空気が窓から出ていかないように、換気の際はできるだけエアコンから離れた窓を開けるようにしましょう。
●夏場の換気
エアコンの電源を入れる前に、窓を開けて部屋にこもった暑い空気を外に逃がすことが大切。冷房中の換気は、エアコンからできるだけ離れた窓を開けるようにして、機械の負担や結露の発生を防ぎましょう。
●花粉シーズン
毎年花粉に苦しまれている人にとっては、窓を開けると花粉が家の中に入ってくるのが悩みのタネですね。ポイントはカーテンを閉めたまま窓を開けて換気を行うこと。花粉がカーテンに付着し、フィルターの役目を果たしてくれます。さらに、換気を行う時間帯も重要です。花粉の飛散量が多いお昼の12時頃と夕方の6時頃を避け、比較的飛散量が少ない早朝や午後3時頃、夜の8時以降がオススメです。また、花粉が溜まりやすい窓付近はこまめに掃除機をかけたり、濡れタオルを使って取り除くと良いでしょう。カーテンは定期的にお洗濯を。あらかじめ、ご自宅で手軽に洗える素材を選んでおくのも、良いかもしれません。
換気を考えた、健康に暮らせる家づくりを
健やかで快適な住まいを考えるうえで、「陽当たり」と同じぐらい重要なのが、いつも新鮮な空気を取り入れることができる「風通しの良さ」です。風通しの良い住まいにするには、換気システムの設置はもちろんのこと、窓の位置や外構との関係、間取りプランも深く関わってくるため、住まいづくりのプロと相談しながらより良いカタチを考えていきたいところです。
その際、ぜひ知っておきたいのが、住宅性能表示制度。これは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて平成12年10月にスタートした、シックハウス対策をはじめ住まいの安心チェックができる新しい制度です。等級や数値で安心・安全を見える化することで、理想的な住まいづくりのための確かな基準になるはずです。
まずは日々の暮らしのなかで、換気の習慣を付けて部屋のなかをリフレッシュ。1年を通して心地よくキレイな空気に包まれる、健康な暮らしを手に入れましょう。