いい家づくりコラム

屋根点検イメージ

屋根の寿命は「換気」で決まる!屋根材よりも換気にこだわろう

2022.11.15

家のパーツのなかで過酷な環境にさらされているのは外壁だけではありません。傘となり、日差しや雨風から家を守る「屋根」こそ、最も過酷な環境にさらされています。屋根の耐久性は、家そのものの耐久性に直結するといえます。
そんな屋根の耐久性をあげようとしたとき、屋根の表面を覆う瓦などの屋根材や工法に着目してしまいがちですが、最もこだわるべきは「屋根の換気」です。
今回のコラムでは、屋根が劣化する原因やその対策について詳しくお伝えします。「屋根の換気は意識していなかった!」という方はぜひご一読いただき、長寿命の屋根づくりにお役立てください。


屋根の構造

屋根は主に4つの部材で構成されています。
屋根の構造


屋根材

屋根表面に取り付けて、日差しや雨風から屋根を守る部材です。屋根材には瓦やガルバリウム鋼板などさまざまな種類があります。耐用年数(寿命)は20~40年と長いですが、5~10年に一度は屋根の点検するようにしましょう。

垂木(たるき)

垂木は屋根のかたちをつくる構造材です。屋根のてっぺんから軒(のき)に向かって、等間隔でななめに取り付けられています。屋根の骨組みであり、屋根の下地や屋根材を支える役割があります。

野地板(のじいた)

野地板は垂木の上に張られる板で、屋根の下地となります。野地板の厚みは屋根材の種類によって決まり、厚み12mm前後の合板でつくられます。耐用年数は20~30年といわれていますが、雨漏りが発生すると耐用年数は著しく短くなります。湿気により劣化が進みやすいため、5~10年ごとの屋根の点検時には、必ず野地板の状態を確認しましょう。

ルーフィング

ルーフィングは野地板の上に張られる防水シートで、屋根の種類にかかわらず必ず使用される部材です。屋根材のすきまから入り込む雨水から、野地板を守る役割があります。アスファルト製やゴム製、不織布製など多様な種類があり、耐用年数も10~30年とさまざまです。防水機能の反面、透湿性が低く湿気がたまりやすいため、野地板の結露に注意が必要です。


屋根が傷む原因は湿気

見た目には問題ないように思える屋根も、実は劣化していることが少なくありません。一体、屋根のどの部分が劣化するのかと言うと、野地板です。野地板の上に張るルーフィングにより、浸入する雨水からは守られていますが、湿気には無防備です。ルーフィングの素材は透湿性の低いものが多いため、湿気がたまりやすく結露が発生しやすい状態にあります。その結果、次第に野地板は劣化し、やがては腐敗して屋根が歪んでしまうこともあるのです。
屋根の劣化を防ぐには、しっかりと湿気対策をとり、野地板が乾燥した状態を保てることが重要といえます。


屋根の寿命をのばす要は「換気」

屋根の寿命をのばす、つまり屋根裏の湿気や結露を防ぎ、野地板の寿命をのばす方法は「換気」です。それに加えて、野地板を厚くすることも有効です。詳しくご説明します。

棟(むね)換気の数を増やす

湿気による野地板の劣化を防ぐためには、どれだけ屋根裏の湿気を逃がせられるかが重要となります。透湿性の高いルーフィングを選ぶ方法もありますが、製品によっては耐用年数が短くなる場合があり注意が必要です。多用されているルーフィングは透湿性が低く、野地板の上側(ルーフィング側)から湿気を逃がすことは難しいため、野地板の下側から湿気を逃がします。
その要となるのが、棟換気です。棟(むね)とは、屋根のつなぎ目やてっぺんを覆う部材で、雨水の浸入を防ぐとともに換気口の役割もあります。軒先の換気口から屋根裏に外気が入り、棟がその出口となります。棟から湿気を十分に逃がすためには、屋根裏(野地板の下)にビュービューと風が通るほどの空気の流れがなければいけません。
棟換気は、ハウスメーカーや工務店に「おまかせ」にすると、最低限の数しか設けない場合が多いため、棟換気の数は事前に念入りな打ち合わせをするようにしましょう。
昔の工法でつくられた寄棟(よせむね)屋根は棟換気の数が十分でなく、野地板が劣化しやすいため特に注意が必要です。もしも屋根を寄棟でつくる場合は、すべての棟に棟換気を施すことをおすすめします。
棟換気

野地板を厚くする

棟換気をしっかりとつくることに加えて、野地板を厚くすることも屋根の寿命をのばすためには有効です。野地板の厚さは屋根材の種類によって決まり、12㎜前後が基本的な厚さですが、2倍の24㎜にすれば20~30年間たわむことのないビシッとした野地板の状態を保つことが可能です。将来的に屋根替えをするとき、野地板を交換せずに済めば、工期もコストも抑えられます。


屋根づくりは棟換気にこだわろう

屋根の寿命をのばすには、屋根の下地である野地板の劣化をいかに防ぐかが肝心です。野地板の劣化の原因となる湿気を逃がすために、棟換気を計画的にしっかりとつくるようにしましょう。
屋根の寿命をのばすことは家の寿命をのばすことにつながります。屋根か外壁か、どちらにお金をかけようか迷っている方は、屋根を優先することをおすすめします。