いい家づくりコラム

時間イメージ

50年以上もつ家の建て方

2023.6.20

「丈夫な外装や鉄骨造のほうが、家は長寿命になる」そんなイメージはありませんか?
実は、家を長持ちさせるために重要なのは素材ではありません。素材に関わらず、あるものから家をどれだけ保護できるかが家の寿命を左右します。

今回のコラムでは、家を長寿命にするためのポイントを具体的にお伝えします。このポイントをおさえておかないと、年月の経過とともに家の品質は悪くなる可能性が高いので、ぜひ今後の家づくりの参考にしてくださいね。


なぜ家は傷むのか

家が傷む大きな原因は「水気」です。雨水はもちろんですが、入浴や調理など、家の中でも日常的に湿気が発生しています。これらの水気からしっかりと家を保護してあげないと、家を形作る骨組みや屋根などの構造体は劣化してしまうのです。木造であれば木が腐りますし、丈夫なイメージのある鉄骨もさびてしまいます。家を長寿命にするためには、素材は何であれ構造体そのものが乾燥している状態を維持する。これがなにより重要なのです。

では、実際に家づくりにおいてどんな点に注意すればよいのでしょうか。骨組みと屋根についてそれぞれ具体的にみてみましょう。 


骨組みの保護

柱や梁(はり)など家の骨組みは壁で覆われており、一見すると水気から保護されているように思えます。しかし、わずかなすき間があれば湿気は壁の中に浸入するため、家の中にも防湿対策が必要です。

気密性を高める

入浴や調理など家の中で発生する湿気は、換気扇で排気しても部屋の角などのすき間から壁の中へ入ろうとします。壁内部の湿度が高い状態は骨組みに悪影響しかありません。防湿に有効なのは、とにかく気密シートを連続して切れ目なく貼ることです。とくに部屋の角の部分は折り返して貼るといった丁寧な施工が求められます。
また、より注意が必要なのは床下からの湿気です。床下から壁の内側へと湿気が流れやすいため、空気の流れを遮断する「気流止め」を施すなど細やかな対策が大切となります。

透湿シートを使う

気密性を高めても防ぎきれない壁内部への湿気の浸入に備えて、「透湿シート」を使用することも有効です。透湿シートは湿気を通しながらも雨水は通さない優れもの。
壁の中の断熱材は水気を含むと断熱性能が落ちてしまうため、構造体以上に乾燥させておかなければなりません。
透湿シートで湿気を出して通気層から逃す。この方法をとれば、壁内部の乾燥が促進され、骨組みの品質を保つことができます。


屋根(野地板)の保護

直接雨をうける屋根は家にとって傘のようなもの。屋根の健康が守られるほど家は長持ちします。具体的には、屋根の下地である野地板(のじいた)を乾燥した状態で維持することが重要となります。

換気棟を増やす

野地板は垂木(たるき)と呼ばれる屋根の骨組みの上に貼られています。軒先から棟(むね)へと空気の流れがあるため、野地板の下の面(小屋裏側の面)は乾燥しやすい状況です。ただし、この換気棟の数が少ないと、換気量も少なくなってしまいます。換気棟の数は1〜2つが一般的ではありますが、予算に余裕のある方は屋根全体に換気棟を設けることをおすすめします。

透湿性ルーフィングを使う

一方で、乾燥しにくい状況にあるのが野地板の上の面(屋外側の面)です。野地板の上にはルーフィングというゴム状の防水シートが貼られています。よく使用されるアスファルトルーフィングは雨水から野地板を保護する効果は高いのですが、湿気も通さないためルーフィングと野地板の間に湿気がたまってしまうという問題があります。この場合、標準的な厚さ12mmの野地板では50年はもたないと考えてよいでしょう。

この問題に対処できるのが透湿性のあるルーフィングです。雨水を防ぎながらも湿気を通すことが可能で、50年以上の耐久性をもつといわれています。ただし、透湿性ルーフィングを使う場合は屋根材に工夫が必要となります。湿気を外に逃がすために屋根材は一枚板の形状ではなく断面に凹凸のある屋根材を選び、先述の壁の構造と同様、通気できる環境を整えましょう。

しかし、透湿シートや特殊な屋根材は大きなコストがかかります。コストを抑えたい場合は、野地板の厚さを12mmから24mmにするという手もあります。これだけの厚みがあれば少々腐食したとしても芯はしっかりと残っているため、将来的に屋根替えをするときに野地板を張り替えずに済み、屋根替えのコストも大きく抑えられるでしょう。

【こちらのコラムでより詳しく解説しています】
屋根の寿命は「換気」で決まる!屋根材よりも換気にこだわろう


湿気をためこまない家こそ長寿命

家を長寿命にするためにおさえるべきポイントは、木造であれ鉄骨造であれ同じです。壁や屋根内部への湿気の浸入を予防し、たとえ浸入したとしても湿気をためこまず、家の骨組みや屋根の野地板の乾燥を維持すること。それを実現するのが「透湿+通気」です。外装材にお金をかけるのもよいですが、家の寿命に直結するこの仕組みを優先的に取り入れてみてくださいね。